このコラムでは2024年度(令和6年度)診療報酬改定で新設された早期診療体制充実加算について解説していますのでご参考ください。
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24年診療報酬改定は精神科・心療内科クリニックには大きなマイナス改定
早期診療体制充実加算の詳細を説明する前に24年診療報酬改定の精神科・心療内科クリニック全体への影響について触れておきたいと思います。
結論からお伝えすると24年診療報酬改定は心療内科・精神科クリニックにとってはかなり厳しい内容となりました。
最も影響の大きいのはメインの算定項目である通院・在宅精神療法の減算です。
30分以上の場合の点数の変更はありませんでしたが、最も算定回数の多い30分未満が、
・精神保健指定医による場合:330点→315点(4.5%減少)
・精神保健指定医以外の場合:315点→290点(7.9%減少)
と大きく減少していることがわかります。
それと同時に処方箋料(院外の場合68点→60点と8点減算)も下がっている点も大きなマイナスです。
初・再診料のプラス、ベースアップ評価料や医療DX推進整備体制加算などのプラス部分を加味してもマイナスの方が大きく、多くの心療内科・精神科クリニックでは3〜5%の医業収入減となっていると考えられます。
早期診療体制充実加算はクリニックでは算定のハードルが極めて高い
通院・在宅精神療法のマイナスをカバーするのではないかと期待されたのがタイトルの早期診療充実体制加算でした。
(診療報酬改定ではまず改定項目と点数のみ公表されて、その約1ヶ月後に施設基準などの算定要件が公表されます。)
早期診療体制充実加算は通院・在宅精神療法の加算として診療所の場合は3年以内は50点、それ以外の場合は15点が算定できるというものでした。
算定条件が公表される前、「通院・在宅精神療法自体は減算だけど、早期診療体制充実加算によってカバーされるっぽいな。実質プラス改定になるかな?」という想定をされた先生が多かったのではないでしょうか?
しかしそのような期待は算定要件の公表と同時に打ち砕かれます。
ほぼ全てのクリニックでは算定ができないと言っても過言ではない内容となっています。
※日本精神神経科診療所協会も「令和6年度診療報酬改定に関する声明について」という声明の中で同様のことを言っています。
参考URL:https://japc.or.jp/pdf-embed-page/?pdf=https://japc.or.jp/wp-content/uploads/2024/04/statement.pdf
算定が難しい点主な点は下記のようになります。
・1医師あたり月10名以上、初診時の60分以上の通院・在宅精神療法を算定すること
・地域の精神科医療提供体制への貢献として休日、深夜の外来対応や時間外対応加算1などの要件を満たさなければならないこと
・多職種の活用、専門的な診療等に係る加算の届出を行わなければならないこと
細かい算定要件は下記に記載しますのでご確認ください。
早期診療体制充実加算の点数・算定要件・施設基準(クリニック部分のみ)
通院・在宅精神療法の早期診療体制充実加算について、点数や算定要件などの詳細を記載しますのでご参考ください。
<点数>
早期診療体制充実加算
(1)最初に受診した日から3年以内の期間に行った場合 50点
(2)(1)以外の場合 15点
<早期診療体制充実加算の算定要件(概要)>
(1)当該患者を診療する担当医を決めること。
(2)担当医は、当該患者に対して、以下の指導、服薬管理等を行うこと。
ア 原則として、患者の同意を得て、計画的な医学管理の下に療養上必要な指導及び診療を行う。
イ 患者の状態に応じて適切な問診及び身体診察等を行う。
特に、精神疾患の診断及び治療計画の作成並びに治療計画の見直しを行う場合は、
詳細な問診並びに身体診察及び神経学的診察を実施し、その結果を診療録に記載する。
ウ 患者が受診している医療機関を全て把握するとともに、処方されている医薬品を全て管理し、
診療録に記載する。
エ 標榜時間外の電話等による問い合わせに対応可能な体制を有し、
当該患者に連絡先について情報提供するとともに、受診の指示等、速やかに必要な対応を行う。
オ 必要に応じて障害支援区分認定に係る医師意見書又は要介護認定に係る主治医意見書等を作成
すること。
カ 必要に応じ、健康診断や検診の受診勧奨や、予防接種に係る相談への対応を行う。
キ 患者又は家族等の同意について、署名付の同意書を作成し、診療録に添付する。
ク 院内掲示やホームページ等により以下の対応(※)が可能なことを周知する。
ケ 精神疾患の早期介入等に当たっては、「早期精神病の診療プランと実践例」等を参考とする。
<早期診療体制充実加算の施設基準(概要)>
・初診、30分以上の診療等の診療実績
過去6か月間の初診日に60分以上の通院・在宅精神療法の算定回数の合計/勤務する医師の数≧60以上
・地域の精神科医療提供体制への貢献(時間外診療、精神科救急医療の提供等)
アからウまでのいずれかを満たすこと。
ア 常時対応型施設(精神科救急医療確保事業) 又は 身体合併症救急医療確保事業において指定
イ 病院群輪番型施設(精神科救急医療確保事業)であって、時間外、休日又は深夜において、入院件数が年4件以上 又は 外来対応件数が年10件以上
ウ 外来対応施設(精神科救急医療確保事業) 又は 時間外対応加算1の届出かつ精神科救急情報センター、保健所、警察等からの問い合わせ等に原則常時対応できる体制
常勤の精神保健指定医が、精神保健福祉法上の精神保健指定医として業務等を年1回以上行っていること。
※常勤の精神保健指定医が複数名勤務している場合は、少なくとも2名が当該要件を満たすこと・精神保健指定医、多職種の配置等
常勤の精神保健指定医を1名以上配置
多職種の活用、専門的な診療等に係る加算のうちいずれかを届出
・療養生活継続支援加算
・児童思春期精神科専門管理加算
・児童思春期支援指導加算
・認知療法・認知行動療法
・依存症集団療法
・精神科在宅患者支援管理料
・精神科入退院支援加算
・精神科リエゾンチーム加算
・依存症入院医療管理加算
・摂食障害入院医療管理加算
・児童思春期精神科入院医療管理料
早期診療体制充実加算の疑義解釈
最後に早期診療体制充実加算について現在出ている疑義解釈を記載しますので、参考にしてください。
令和6年3月28 日 疑義解釈(その1)より引用:https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001237675.pdf
Q:「I002」通院・在宅精神療法の注 11 に規定する早期診療体制充実加算の施設基準について、「当該保険医療機関が過去6か月間に実施した通院・在宅精神療法の算定回数に占める、通院・在宅精神療法の「1」のロ若しくはハの(1)又は「2」のロ若しくはハの(1)若しくは(2)の算定回数の合計の割合が5%以上であること。」とされているが、「1」のハの(1)には、情報通信機器を用いて行った場合の算定回数も含まれるのか。
A:含まれる。
Q:早期診療体制充実加算の施設基準について、「精神保健福祉法上の精神保健指定医として業務等を年1回以上行っていること。」とあるが、精神保健福祉法第 19 条の4に規定する職務は含まれるのか。
A:含まれる。
Q:早期診療体制充実加算の施設基準について、「精神保健指定医として業務等を年1回以上行っていること。」とされているが、国又は地方公共団体における精神医療に関する審議会の委員としての業務は含まれるのか。
A:含まれる。ただし、その場合について、委員として参加する医師は精神保健指定医であること。また、委員としての出席状況等については、照会に対し速やかに回答できるように医療機関において保管すること。
Q:早期診療体制充実加算の施設基準について、「診療所にあっては、当該保険医療機関が過去6か月間に実施した通院・在宅精神療法の「1」のロ又は「2」のロの算定回数の合計を、当該保険医療機関に勤務する医師の数で除した数が 60 以上であること。」とされているが、「当該保険医療機関に勤務する医師の数」の計算方法如何。
A:常勤の医師の数及び非常勤の医師を常勤換算した数の合計により算出する。
令和6年5月31 日 疑義解釈(その7)より引用:https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001259608.pdf
Q:「I002」通院・在宅精神療法の「注 11」早期診療体制充実加算児童思春期支援指導加算の施設基準に「当該保険医療機関が過去6か月間に実施した通院・在宅精神療法の算定回数に占める、通院・在宅精神療法の「1」のロ若しくはハの(1)又は「2」のロ若しくはハの(1)若しくは(2)の算定回数の合計の割合が5%以上であること。」とあるが、計算の分母に、精神科ショート・ケア、精神科デイ・ケア、精神科ナイト・ケア、精神科デイ・ナイト・ケア及び重度認知症患者デイ・ケアの算定回数は含まれるのか。
A:)含まれない。
以上、今回は2024年度(令和6年度)診療報酬改定で新設された早期診療体制充実加算について解説しました。
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