
医師のMMと申します。開業医/準備医師オンラインサロン「ドクターズチャート」の運営をしています。
ミニマム開業とは何か?
今日は、かなり小規模での開業、これを最近はミニマム開業と呼んだりしますが、今日はそういった開業形態について、私が思うメリットデメリットを考えてみたいと思います。
クリニック開業って、通常は安くても数千万円、高いと1億以上の初期投資をかけて始めるのが一般的な事業なんですよね。
もちろんこれらのほとんどか全てを借金で賄って始めるわけです。
なので当然リスクもある事業と言えるわけです。
それが、最近は、こういった初期投資を極限まで減らしてランニングコストもかなり減らした開業スタイルを取っておられる先生があるんですよね。
これからの時代、こういった開業スタイルってすごく注目を浴びるんじゃないかなあと思っているんですよね。
その中でtwitter上で有名な先生がおられるんですが、ゆるぽた先生というお名前でtwitterをされている、精神科の先生がおられるんです。
こちらの先生とはtwitter上のみのお付き合いではあるんですけど2年前くらいからよく知っていまして、開業情報を交換したりしていたんですよね。
ミニマム開業を考えておられる先生はぜひフォローされるといいと思います。
そして最近そのゆるぽた先生と開業にかかる費用について、twitter上で絡むことがありましたので、その話から、私が思うミニマム開業についてのメリットでメリットなど、考察をお話ししてみたいと思います。
ミニマム開業の初期投資とランニングコストの削減
まず、ミニマム開業の肝となるのは、場所ですよね。
通常は駅前の40坪とか50坪とかを借りるわけなんですけど、それがミニマム開業では、マンション一部屋分くらいでいいんですよね。
なので、その部屋の内装工事なども当然そのマンションの内装を少し変えるだけですし、なんならほぼ何もしなくてもいいかもしれませんから、数十万円から100万円くらいでしょうか。
ゆるぽた先生は20万円とおっしゃっていましたね。
そして精神科の先生なら医療機器もほぼ要らないようですから、結局初期投資150万円、とおっしゃっていましたよね。
私がほぼ6000万円かかったことを考えると、もはや消費税分どころじゃないですもんね。
そして次はランニングコストなんですけど、開業当初は、当院は大体月200万円までに抑えようとずっと考えて計算していたんですよね。
これはもちろん私の給料は入っていないです。
一人単価5000円、20日診療日があるとすると、1日に20人来院がないと赤字になってしまう計算ですね。
それがこちらのゆるぽた先生のクリニックでは、なんとランニングコスト月20万円のようなんですね。
とすると、1日2人が来てくれれば経費分が浮く計算になりますね。
どう考えてもリスクが低くてすごいですよね。
そしてスタッフも雇用するにしても一人か、場合によっては雇わないスタイルもあるようですよね。
ミニマム開業のメリット
というわけで、メリットとしては、明らかに初期投資もランニングコストも抑えられますから、リスクを非常に低く始められますし、借金を背負うことがほとんどない、ということになりますから、もし辞めたいと思っても辞められるでしょうし、スタッフの雇用もほとんどないですから、スタッフの為にクリニックを繁栄させないといけない、という経営者としてもプレッシャーもないですね。
あとは、例えば完全予約制にしておけば、自分が休みたい日は予約を入れないようにしておけば、その日は心置きなく休診にすることができます。
では一番大事な実際に収支はどうなるのか、ということなんですけど、先程の一人単価5000円として、診療日が20日、×12ヶ月で、年収2000万円を目標にするとすると、1日に20人の来院があるとこのランニングコストだと達成できることになりますね。
半日で10人。3時間診療時間を開けるとすると一人20分ずつ予約をいれてうまれば年収2000万を超える、ということになります。
1日15人で年収1500万円、ということになりますね。
これくらいの人数を年間通してコンスタントに来てもらえるのなら、こういったスタイルはリスクが低くて考慮すべき今後の開業形態だと思いますね。
ちょうど例えばネイリストの人やエステティシャンの方が、馴染みのお客さんだけにマンションの部屋で施術する、と言う感じですかね。
これから増えてくる形態だと思いますね。
ミニマム開業のデメリットと課題
さて、今まではメリットばかりをお話ししてきたんですけど、当然デメリットもあると思いますから、
それを私なりに考察してみたいと思います。
まず一つ目は、どうやって開業したことを告知するのか、ということですね。
簡単に言うと集客はどうするのか、ということです。
通常の開業なら駅に看板を立てたりある程度立地とか視認性を考えて建てたりするんでしょうけど、マンションの1室ではこれは知らないと受診できない、と言うことですもんね。
なのでHPとか今ならSNSなどを駆使したり、あとはリアルのクチコミですよね。
そういったもので持続的に認知度が上げえていかないといけない、という部分はあると思います。
次は逆に流行りすぎても困る、ということはあると思います。
よく飲食店で隠れ家的なお店で予約は1年待ち、などというところもあるかと思うんですけど、クリニックの難しいところは当然病気を治すのは1日でも早いほうがいいわけなので、1年待ってもらうわけにいかない、という事情もありますよね。
なので、クチコミがかなり広がって受診したい人が爆発的に増えたとしても、それを受け入れるキャパはもちろんありませんから、機会損失は起きると思いますよね。血糖値を下げる薬を求めている人を1年待たせることはできないですもんね。
そうすると、受診したくてもできない、というひとの不満を受けてしまう可能性もあります。
なので認知度をちょうどいいくらいのレベルに保つ、というかなり難しいミッションも必要となる気もします。
これ経営してみて私自身痛感していることなんですけど、気を抜くと患者さんは減っていきますし、やる気を出すと患者さんは増えていくことが多いわけなんですけど、同じくらいでキープするように調整する、というのは相当難しいと思っているんですよね。
なのでいいくらいのところで落ちないようにでも増えすぎないように調整する難しさ、というのはあると思いますね。
診療科目とミニマム開業の適性
あとはやはり診療科目によっては難しい場合もあるでしょうね。
高額な医療機器がいるような診療科目は、初期投資をかけて開業しますから、ある程度の規模にならないとその医療機器分の出費を回収できない、ということになりますから、どうしても多くの患者さんを集める必要が出てきますよね。
そして季節変動が激しい診療科目とか、急性期疾患の患者さんメインなら、やはり理難しいと思います。
例えば耳鼻科や小児科、整形外科、眼科、などは難しいかもしれません。
なので、精神科とか、慢性疾患メインの内科、皮膚科などがこのミニマム開業に向いているかもしれません。
あっ、小児科の中でも発達障害とかアレルギーとか慢性疾患メインでそれほど初期投資がいらない形ならミニマム開業もありかもしれませんね。
最後は、その先生の人気に依存する傾向が普通の開業以上にどうしても起きると思いますね。
数少ない患者さんを一人一人じっくり診察することがミニマム開業のアイデンディティ、という所がありますから、例えば自分が休んで誰か代わりの人に診察してもらう、というのは非常にしにくい、ということは出てくると思います。
もちろん開業医は皆多かれ少なかれそうなんですけど、このスタイルでは特にその先生のファン、という患者さんを作ることで成り立つスタイルだと思いますから、替えが効かないという難しさもあると思います。
ミニマム開業の将来性と働き方の多様化
ということで、ミニマム開業のメリットとデメリットをお話ししてきたんですけど、全ての開業がこうなることはありえないとは思いますけど、フリーランスに近い形で自分の生活を重視して働きたい時間だけ診療時間にしてあとは好きなことに時間を費やす、という開業は、SNSで告知しやすくなっている今の時代には今後増えていきそうな気がしますね。
ただもちろん一方でどんどん上を目指して分院展開とか規模拡大していきたいという先生も逆に増えてきている印象もありますし、
開業のスタイルももっと多様化していくんだろうなあと思いますね。
いかがだったでしょうか。
以前から再三言っていますけど、医師の働き方ってもっと多様化していっていいと思っているんですよね。
で、実際色々な、今までなら思いも寄らないスタイルが出てきていますから、そうやって今起きている医師の働き方や労働時間の問題が少し解決していくようになったらいいのになと思ったりもしています。

記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)
耳鼻咽喉科クリニックの理事長として日々の診療、理事長業務を行うかたわら、開業医・開業準備医師限定のオンラインサロン「ドクターズチャート」をよいこはこいよと2019年に設立。現在オンラインサロンは会員数3,700名超。Twitterフォロワー数20,000人、音声配信メディアVoicyパーソナリティ。