さて、今回は、実際今開業医はどの程度の経済状況、生活状況なのか。
開業は厳しくなってきているとか、まだやっていけるとか、色々な情報を耳にするだろう。
皆様々な思惑があるため、本当の情報は流さない。
そこで、私の周りの医師の様子などを含め、忖度なく本音で語ってみたいと思う。
クリニック開業で後悔しないために~開業医の今の状況~①クリニック開業医の経済面
まず、勤務医と比べて経済的にはどうなるのか。
これに関しては、相当幅がある印象だ。
勤務医は、研修医が500万程度から、部長になると最高でも2000万くらいと、生活水準の幅はそれほど大きくない。
しかし、開業医は当然のことながら利益の幅が大きくなる。
いわゆるツブクリで赤字の所もある一方、利益ベースで1億を越える所もある。(美容や自費診療は今回は除外。)
そして、その中でボリュームゾーンは、利益2000万から5000万といった所だろう。
さらに仕事の関連の飲食費や交通費に経費が少し使えるため、これに経費分という感じだだ。
以前のブログを見てもらうとわかると思うが、これを多いとするか少ないとするかは考え方による。
クリニックは、保険診療である以上単価を大きく上げることは基本的にはできず、収入は患者数に依存する。
そして医師自身が対応しなければならない性質上、一人で診れる人数には限界がある。
待ち時間が長くなりすぎると患者は他院に流れていく。
売上1億5000万、科目によっては2億が大体の上限だろう。(手術を手掛けると状況は変わってくるがここでは言及しない)
これ以上だと、診療時間が相当長くなり、相当体力に自信のある医師でなければ長続きしないだろう。体を壊して休診になると本末転倒だ。
とすると、自ずと利益の上限は決まってくる。
開業医は、ある程度の富裕層にはなり得るが、大成功したIT社長のような大富豪にはなり得ない業態なのである。
クリニック開業で後悔しないために~開業医の今の状況~②開業医と飲食店の比較
また一方で、他の自営業と比べて考えてみる。
飲食店は開業3年で7割が閉店する、などというデータがあるようだ。
それに比べてクリニックの経営的理由による閉院はかなり少ない。
これは、クリニックは医師免許がないとできないので参入障壁が大きいことと、利益率が高いことによる。
そして価格は健康保険で決められており、値下げ合戦が起きることもない。
すなわち非常に恵まれた状況であることは間違いない。
しかし開業にかかる費用はたとえばラーメン屋開業の3倍程度(5000万から1億)になるため、そのリスクはある。高齢になってからの開業はよりリスクが上がる。借金を返し終わるまで健康であることは、必要条件だといえる。(軌道に乗れば5から10年で返済も可能だ。ただ繰り上げ返済はすすめない。理由はまた機会あれば)
通常年齢と共に気力体力が落ちる。
開業を考えたならば、ある程度の若い時に開業し、早めに軌道に乗せるのがよいと思う。
クリニック開業で後悔しないために~開業医の今の状況~のまとめ
少し話がずれたが、まとめると、
○多くの場合、勤務医よりは稼ぐことができるが、ある程度以上になると自分の気力と体力と相談ということになり、上限がある。
○また借入はかなり大きくなるため、返済が終わるまで失敗が許されないという、リスクはある。(これは医師の健康に依存する)
○ある程度の富裕層にはなれる可能性があるが、大金持ちにはなりにくい。
以上が開業医の現状だ。
すなわち現時点では、事業としてはかなり安全な部類に入るといえる。
しかし私の感覚では、この状況はあと5年、長くて7年、といったところだと思っている。
時代の変化がどんどん加速している。これから開業医を取り巻く状況は劇的に変化すると私は思っている。
記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)
耳鼻咽喉科クリニックの理事長として日々の診療、理事長業務を行うかたわら、開業医・開業準備医師限定のオンラインサロン「ドクターズチャート」をよいこはこいよと2019年に設立。
現在オンラインサロンは会員数1100名超(2022年2月現在。)
Twitterフォロワー数13,700人、音声配信メディアVoicyパーソナリティ。