クリニック人事の「3の法則」

クリニック人事の「3の法則」

医師のMMと申します。開業医/準備医師オンラインサロン「ドクターズチャート」の運営をしています。

今日は、私がクリニックの人事を考える上で意識している「3」という数字にまつわる話をしたいと思います。

いきなりなんだと思われるかもしれませんが、人事で出会う色々なシチュエーションの中で、「3」という数字を意識していることってあるなと思うことがあるんですね。

私たち開業医にとって人事のことは多くの場合本当に悩むポイントなんです。

私自身色々失敗もしてきて、こう思うようにするとうまくいくな、ということを数字の「3」にからめて3つお話ししたいと思います。

クリニック人事3の法則①「大事なポストは3人で」

まず一つ目の「3の法則」は、クリニックの重要なポストを任せる人は3人にすべき、ということなんですね。

どういうことか説明します。

クリニックって、多くの場合数少ないスタッフでやりくりすることが多いわけなんです。

そうすると、例えばスタッフの中でリーダーといえる人が一人だけで、他はそのリーダーに従う、という組織になることってあると思うんですね。でもこの状態は非常に危険なんです。

そのリーダーが辞めてしまうとクリニックが回らなくなる、ということは火を見るより明らかですよね。

逆にこのリーダーが自分が辞めるとクリニックが回らないということを傘にきて権力を持ってしまって、院長でさえそのリーダーを抑えることができず横暴になって、他のスタッフがどんどん辞めていく、というパターンもありますね。

でも気弱な院長としては、このリーダーが辞められると診療が回らないと思っていますから、仕事ができるのに大人しいそのリーダーに合わない重要なスタッフが辞めていくのを止められない、ということになったりしてしまいます。

ですので一人に頼るというのは怖い、というのは皆さんお感じになると思います。

じゃあ2人ならいいか、というとやはりこれもベストではないんですね。

どういうことかというと、クリニックスタッフというのは大体結婚適齢期だったり、旦那さんの転勤があったりする方も多いですから、1人が急に辞めるということが起きることがよくあります。

すると、結局残された1人に責任と仕事がのしかかってきて、結局その残った一人も辞めてしまうということが起きてしまうんですよね。

じゃあ一人辞めた時に次のリーダーとなる一人を育てるといいかというと、これもそんなに簡単ではなくて、残されたリーダーが教育も担わないといけませんから、余計に負担がかかる可能性もあります。

すなわち残されたリーダーのキャパシティによってそのクリニックの運命が変わってしまうという事態になるんですね。

そこで3人いるとどうでしょうか。

もし一人辞めてもまだ2人いますから、その時点で新しいリーダーを育てる時間もあります。

仕事量も2人だとかなり楽でしょうし、何より同じ立場の仲間がいる、というのは非常に心強いでしょうから、やめようという気持ちはまだこの時点では起きにくいと思うんですね。

リーダーとしての責任が3人に分かれているということで、心理的負担もかなり減るように思います。

あとは、不必要な権力を持ちにくい、ということもメリットですね。 自分が辞めても病院が回る、という状況であれば、不必要に強気に出るということもしにくいと思います。

「サッカー代表のキーパーの数も3人」

ちょっと話がずれるかもしれませんが、私がこの3人ということを考える時にいつも思うのが、W杯サッカーのキーパーのことなんですね。

どういうことかというと、どこのチームも23人の代表メンバーのうち3人キーパーを連れていくんですね。

でも実際は大体キーパーってそのうち1人しか出ないですよね。

ということは、23人しかない貴重な枠に、2人のほぼ出ることのないキーパーを連れていく、ということになるんですよね。

これはなぜだかご存知ですか?

これはそれだけキーパーがいなくなるとサッカーとしての試合にならない、というとだからなんですね。

詳しく説明しますと、例えば一人が反則して退場になるとしますよね。

するともう一人が交代して出ます。

なら2人で良さそうな気がしますが、もし2人なら交代して出たキーパーは、自分が退場してしまったらもうキーパーがいませんから試合にならない、ということになります。

すると、当然ファールすれすれの思い切ったプレーができなくなる、ということになりますよね。

でもキーパーが強気に出られないということになると、やはりこれでも試合にならない、ということになると思います。

というわけで、ほぼ出ることがない3人目のキーパーがいることで、1人目のキーパーが思い切ったプレーができる、ということなんですよね。

つまり、大事なポジションは3人、というのがよい、ということになります。

「リーダーが3人いることのデメリット」

じゃあデメリットは何か?ということなんですが、これはリーダー的な人材を三人も育てるという大変さがまずありますね。

やはりこれは一人ずつ育てていって、数年かけて3人にする、ということしかないと思います。

もう一つのデメリットは、やはり人件費がかかる、ということですね。

リーダーとなるとそれなりの手当てつけたりしないといけなくなりますから、それが3人、ということになります。

でも、どんどん辞めては採用をするという人事が落ち着かない状況になることを考えると結局コストとしてはそれほど高くならない気もします。

クリニック人事3の法則②「最低3回は言わないと伝わらない」

2つ目の私の思う「3」の法則は、同じことを最低3回は言わないと伝わらない、ということですね

つい院長は、これ前もいっただろう、と思ってしまうことって多いと思うんですよね。

でも、基本的には何事も1回では伝わらない、と思っておいた方がいいと思います。

同じことを間を空けて3回言って伝わるのならむしろいい方、くらいに思っておいた方がいいと思います。

院長などの経営者が思っていることって、多くの場合スタッフには思いもよらないことも多くって、表面的に指示だけ出されてもピンときていない、ということって非常に多いと思うんですよね。

これは雇用している側とされている側で見ている方向が違いますから当然だと思います。

なので、何かを伝える時は、相手の理解度を見ながら、最低3回はいうくらいのつもりで焦らずに理解してもらう必要があると思っています。

クリニック人事3の法則③「カッとなっても3分頭を冷やす」

3つ目の「3」の法則は、スタッフに対してカッとなってもそれを伝えるのは3分以上経ってから、ということですね。

よくアンガーマネジメントで6秒ルールというものがありますが、ご存知でしょうか。

カッとなってもすぐに反応的に相手にぶつけたりせずに、6秒数えて落ち着くのを待ちましょう、ということですね。

確かに最も沸点が高い時期はそれですぎるとは思います。

でも実際は怒りの感情ってそんな簡単になくならないんですよね。

なので、6秒後に言っても結局相手に理解してもらえないことは起こり得ると思っています。

その時に、大体3分くらい時間が空いていると、他のことを考えたり少し冷静にものを考えたりできる時間ができてなぜ相手がそういう態度になったんだろう、と考えることができ始めると思います。

そこで話す方が、明らかに相手が納得してくれる確率は上がると思います。

じゃあそれ以上経ってからでもいいんじゃない、ということもあるかもしれません。

内容にもよるのですが、間が空きすぎるとその状況で起こったことをお互いが覚えていないことになって、結局きちんと伝わらない、ということがおきることがあると思います。

ですので、起きた事象をお互いがまだ覚えている状況で、頭は冷静になってから話すというのがいいと思っています。

診療中などなら、一人診察を終えてから話したりしたら、経験上冷静に話ができるなと思ったりします。

ということで、今日は私の思う「クリニック人事3の法則」、

・大事なポストは3人、

・同じことは最低3回は言わないと伝わらない、

・カッとなっても3分頭を冷やす、

という3つについてお伝えしました。

いかがだったでしょうか。

開業始めの時は本当に新米経営者ですから、私も色々失敗もありまして、あの時ああ言っておけばあのスタッフは辞めずに済んだのにな、というようなことってありましたよね。

経験して学ぶことも当然多いとは思うんですが、こうやって先に起きるだろう情報をこういったvoicy含めて情報を集めておいて、わざわざ打たなくていい頭を打たずに開業前に前もって知っておくということは悪くないと思います。

※この記事はVoicyでの音声配信の内容をもとに、一部再編集してアップしています。

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記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

耳鼻咽喉科クリニックの理事長として日々の診療、理事長業務を行うかたわら、開業医・開業準備医師限定のオンラインサロン「ドクターズチャート」をよいこはこいよと2019年に設立。現在オンラインサロンは会員数3,400名超。Twitterフォロワー数20,000人、音声配信メディアVoicyパーソナリティ

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