恐怖!?新規個別指導ってどんなのだった?

恐怖!?新規個別指導ってどんなのだった?

医師のMMと申します。開業医/準備医師オンラインサロン「ドクターズチャート」の運営をしています。

新規個別指導とは何か?

今日は、クリニックを開業すると皆が通る道の、厚生労働省による新規個別指導、というものについて話してみたいと思います。

これ医師でも開業医でないと正直全く知らないと思われるマニアック話なんですけど、開業医にはかなりストレスのかかるものなんですよね。

私も開業するまで全く知らなかったですもんね。

でもちょっと知っておられる先生は、この新規個別指導というのが結構大変で、厚労省の医系技官という医師の方の面談を受けるんですけど、相当強く詰められる、などということを聞かれたことがある人もあるかもしれません。

実際私もかなり強く詰問されまして、それなりに大変だったんですよね。

ちょっとややこしいんですけど、これとは別で個別指導というのもあって、これは保険診療の一人当たりの診療費が突出して高いと呼び出される個別指導、というものもあるんですね。

これに関してはかなり強く指導されるみたいで、この面談の後に鬱になったり自殺したりした先生がある、という事件もありました。

今回はこちらの話には言及するつもりはないので、ご興味がある方はググってもらえたらと思います。

さて今日はこの新規個別指導というものは一体なんなのか、私自身の経験談も含めて今日はお話ししてみたいと思います。

新規個別指導の通知と準備

まずそもそもこの新規個別指導というのはどういうものかというと、保険診療クリニックを開業すると全員、大体1年くらいした時に厚生省から呼び出しを受けるんですね。

ここで保険診療とはどういうものなのか、ということを指導される、という場所なんですね。

個別で厚労省の役人の方の面接を受ける、という感じのものです。

私の新規個別指導の体験談

ここからは、私の新規個別指導の時の体験をお話ししていきます。

まず開業して1年くらいのある日はがきが届きまして、その新規個別指導の日が指定されていたんですね。

その日が診療時間の真っ只中だったとしても、その日は休診にしてこれには出席しないといけないんですが、私は診療時間を1時間くらい減らすだけでいい時間を指定されてました。

その指導の日の1週間か2週間前、ちょっと忘れましたけどそれくらいに、カルテとか検査データを10人分、この人のを持ってきなさい、と連絡が来るんです。

そしてその日までに電子カルテから紙にカルテを打ち出したり、検査データをまとめたりして持っていくんですね。

この、大体この持ってくるように言われるカルテって、ちょっとややこしい治療がいる人とか、きちんとレセプトを書けてなくてうっかり病名を書き忘れたなあという人のカルテをほんとピンポイントでピックアップされているんです。

そのカルテと検査データを10冊持って地方の厚生省の出張所という感じの厚生局というところに行くんですね。

私は所属地域の医師会の先生が一緒に立ち会ってくれましたね。

医師会って色々賛否両論聞くことがあると思うんですけど、この時は一緒にいてくれるのはすごく心強かったですよね。

そして始まる前に、医師会の先生に先に釘をさされたんですよね。

厚労省の技官が何を言ってきても言い返さないように、とにかくはい、直します、っていうんだよと言って聞かされたんですね。

技官によってこの指導がかなり楽に終わる人と、大変な人がいるんですけど、私の人は5段階にすると4くらいのややこしい感じの人だと言われました。

そしてしばらく廊下で待ってますと呼ばれまして、面談の部屋に入りました。

相手は厚労省所属の医師の年配の医系技官の人と、あと事務なのか若い医系技官なのかのの若い男性の二人で、こちらは私と医師会の先生の4人、という感じで面談が始まったんですね。

指摘内容への対応と注意点

厚労省の技官の方は多分70代くらいの人かなあと思うんですけど、この人から全部のカルテに関して質問が飛ぶわけなんですね。

初めからレセプトの内容を相手は細かくチェックしてまして、そもそも不備のあるようなレセプトの人をピックアップされていますから、そこで厳しく「この病気にこの検査はやりすぎではないのかね」と言われたりするのに対して答えていくわけなんですね。

私の持ってきたカルテとそのレセプトを両方見ながら、この検査をしている意図がこのカルテに全く書かれていない!と注意されたりしたんですよね。

でも医師会の先生におとなしくしておきなさいと言われていましたから、私ははい、すみません、気をつけます、などと初めは返事していたんです。

ただ、途中から明らかに納得のいかない指摘が始まり出したんですよね。

ちょっと内容は忘れましたけど、どう考えても間違っていない、という内容の診療だったんです。その先生は年配ですから、きっとこのことを知らないんじゃないかと思ったんですね。

でもずっと「君、これはどういうつもりなんだ!」と言われているうちに、おとなしくしておこうと思ってたんですけど、ついカチンときてしまったんです。

私はついに「いや、これはこういう理由で必要だと考えておりまして」などと言い始めてしまったんですね。

そうすると厚労省の技官の顔色が変わりまして、さらに「君は何を言っているんだ」というちょっと沸騰した感じになってしまったんです。

その時に、私は医師会の先生の方をチラッと見たんですけど、その医師会の先生は目で「だめだよ、耐えなさい」と、私を制止するようなしぐさだったんです。

そこで私はハッとなりまして、「はいすみません、気をつけます」と言い直したんですよね。

そうすると相手の技官の方の顔色は元に戻りまして、ふん、という感じになりました。

その後も全てのカルテにおいて質疑応答があるわけなんですけど、今度は途中でその技官の方が、私の持ってきたカルテとレセプトを照らし合わせるのを間違え始めたんですね。

つまりAさんのカルテを見ながら、Bさんのレセプトを見出したんですね。

そうするともちろん全然内容が合いませんから、そこでまたその技官の方は怒り始めてしまったんです。

この治療にこのカルテはどういうことだ!ってなってきたんですよね。

私からはその技官の手元が見えてませんでしたから、え、そんなことあるかなあとおもってたんですね。

ひとしきり怒られた後、その隣のの若い方の方が、「先生、それはカルテが違います」って進言してて、そうしますとその技官は「ふーん、そうか」とか言ってまして、私はただ怒られ損、みたいな感じになりましたよね。

そのあとはとにかく「はい、おっしゃる通りです」と、御意を連発して、最後はまあまあその技官の方も機嫌を取り直されまして、その場は終了したんですね。

終わって医師会の先生に、「いやー、MM先生は言い返し出した時はひやっとしたよ」と言われたりしましたね。

新規個別指導の結果と対応策

ただ、そこで終わりではなくて、その面談の結果が1ヶ月後くらいに送られてくるんですね。

それは何かというと、簡単にいうと、判定みたいなのがありまして、お咎めなしか、何か改善する反省分みたいなのを書いて出すのか、最悪の場合は再指導といって今度はもっと多くのカルテを持っていかないといけない、みたいな結果が返ってくるんです。

私の結果はというと、改善する文章を書いて出しなさい、という結果だったんですね。

反省文みたいなものですよね。

これも遅れて出したりするとまた再指導になるかもしれませんから、これは真面目に書いて出して、それはどうやら認められたようで、晴れて新規個別指導がやっと終了した、ということだったんですね。

ここでもっとお役人の機嫌を損ねてしまったりすると、今までの診療の問題となっている部分を全部返納と言ってお金を取り上げられることもあり得ますから、そうなるとほんと大変ですよね。

なんとか反省文だけで済んだ、という、私の新規個別指導の経験でした。

いかがだったでしょうか。

新規個別指導を乗り切るためのポイント

少し断っておきますと、この新規個別指導を受ける先生を怖がらせようとしてるんではなくて、今はだいぶマイルドになってきていると聞きますね。

時々いわゆる不正請求する悪質なクリニックがあったりしますから、そういうことはしないように、という教育の目的なので、もちろんこの指導には、一定の意味はあるとは思ってはいます。

ただここで大事なことは、医学的にとかエビデンス的に必要かどうか、ではなくて、保険診療のルール上はどうか、ということなんですね。

私たちって医学的に必要だから検査したりするんですけど、見られるのはそこではないんです。

ちょっと納得いかないことってめちゃめちゃあるんですけど、保険診療というのは厚労省がルールですから、それに合うのかどうか、ということなんです。

あとは正直厚労省の技官のどの人に指導されるのか、で大きく状況が変わりますし、誰に当たるのかは運次第ですもんね。

でもとにかく機嫌を損ねないようにおとなしくしておく、というのがどんな面接でも基本ですね。

頭に血が上りやすい先生は気をつけてくださいね。

記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

耳鼻咽喉科クリニックの理事長として日々の診療、理事長業務を行うかたわら、開業医・開業準備医師限定のオンラインサロン「ドクターズチャート」をよいこはこいよと2019年に設立。現在オンラインサロンは会員数3,700名超。Twitterフォロワー数20,000人、音声配信メディアVoicyパーソナリティ

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