落下傘開業って大丈夫?

落下傘開業って大丈夫?

医師のMMと申します。開業医/準備医師オンラインサロン「ドクターズチャート」の運営をしています。

今回はボイシーをお聞きの先生からのリクエストにお答えする形で「落下傘開業のメリット、デメリット」というテーマでお伝えしたいと思います。

落下傘開業という言葉の意味

落下傘開業という単語はご存知でしょうか?パラシュート開業と言ったりもします。

まずは落下傘開業について説明したいと思います。

クリニック開業には、今いる勤務先近くで開業する場合と、全く離れたところで開業する場合があり、この離れたところでのクリニック開業を落下傘開業と言います。

勤務先近くでの開業なら、勤務先病院での自分のかかりつけ患者さんがそのまま新しいクリニックに来てくれる可能性がありますが、離れているとゼロから新規患者を集める必要があります。

要するに患者ゼロからの開業ということになるわけです。実は私も落下傘開業だったんです。

その経験も踏まえて、落下傘開業のメリット・デメリット、落下傘開業をする上での考え方のポイントとお伝えしたいと思います。

落下傘開業のデメリット

まずは落下傘開業のデメリットから3つ挙げてみたいと思います。

1つ目は当然ですが、先ほど言ったように「誰にもクリニックの存在が知られていない」ということです。

すなわち、そこでクリニックを開業したということを徐々に知ってもらっていくことから始めないといけません。

クリニックを開業する、ということはそれなりに自信があるから開業するのだと思います。

なので自院に来てくれさえすれば満足して帰ってもらえると思っているのに、そもそも知られていないから患者が来ないということはよくあります。

ですので落下傘開業は当然クリニック開業時の立ち上がりは遅くなることを覚悟しないといけません。

落下傘開業のデメリットの2つ目は1つ目と似ていますが「そのエリアでは誰もその医師のことを知らない」ということです。

全ての患者と一から関係性を築く必要があるということです。

自院に来る患者さんはこの新しいクリニックの医者はどんな医者なんだ?と恐る恐る受診する、というのは私自身も肌で感じることが多かったですね。

来院してくれた患者さんと一から関係を築くという大変さがある、ということですね。

落下傘開業のデメリットの3つめは「紹介先の病院が知らない先生ばかりで困る」ということです。

元の勤務先近くでの開業なら、患者さんがそのままついてきてくれる人もいるでしょうし、患者を紹介する時も勤務先病院とは連携しやすいですから、ここは勤務先病院近くでの開業のかなり有利な点でしょう。

落下傘開業のメリット

次は反対に落下傘開業のメリットについて2つ挙げてみます。

1つめは「クリニックを開業する場所の選択肢が増える」ということです。

元の勤務先病院の近くに限定して今の自分のかかりつけ患者さんが来られる範囲、と考えるとかなり狭い範囲で探さないといけないことが多いです。

うまく狙ったエリアで物件をみつけられればいいですが、物件探しがうまくいかないと開業がどんどん遅くなる、ということがありえます。

その点落下傘開業は、当たり前ですがいい場所があれば全国どこでも開業可能ですから、開業の選択肢は大きく増えます。

落下傘開業のメリットの2つめは「自由に診療できる」ということです。

これは勤務先病院近くでクリニックを開業するメリットと裏表です。

勤務先近くだと困った時などに色々と連携することが可能ですが、以前の上司が近くにいるわけですので、完全に自由に診療できなかったり、逆に紹介しにくかったりすることもあるかもしれません。

その点、落下傘開業だとそういった以前からの関係もありませんから逆に楽、という部分もあります。

私自身も落下傘開業だったわけですが、クリニックを開業してから周囲の先生方と関係を築いて、今は非常に良好に連携できていますから、ここはやりようだと思います。

あとは本質的な部分ではない話なんですが、医師会などに自分の直属の先輩などがいれば地域の色々な仕事を頼まれて断れないということがありますが、そこは私は同じ医局の先輩がいない状況ですから、仕事が回ってきにくいということでも少し楽だと感じています。

私が思う落下傘開業時の注意点

以上、落下傘開業のメリット、デメリットをお話ししてきましたが、最後に大事だと思うことを述べていきたいと思います。

まず落下傘開業でも問題ないかどうかは、専門とする診療科目によっても考え方は変わって来るでしょう。

例えば糖尿病内科や神経内科などの慢性疾患がメインの科目は、どうしてもクリニックの立ち上がりが悪くなりがちだと思いますが、ある程度患者さんとの関係が築かれていると医者を変えるのは割と大変でしょうから、こういった診療科目は勤務先近くでの開業はメリットが大きいと思います。

逆に、小児科、眼科、耳鼻科、皮膚科など急性疾患メインの科目なら、ある程度でクリニック開業後早めに患者さんが増えるケースが多いです。

そもそも患者さんが医者に付いているというより病院に付いている、ということが多いと思われますので、こういった診療科目は落下傘開業でもそれほどビハインドはないかもしれません。

そしてもう一つは、開業時の年齢についてです。

ベテランでかかりつけ患者を多数持っている部長医師などで年齢が高めでの開業の場合、クリニックの立ち上がりを早くした方がいいと思いますから、やはり勤務先近くをこだわって探す方がいい気がします。

このベテラン開業での戦略ついては過去の記事でもお伝えしていますので、ご興味がある方は、下記リンクをご覧ください。

実は私の周りの先生はほとんど落下傘開業

最後にですが、そもそも私の周りはほぼ落下傘開業なんです。

そして開業後の立ち上がりにどれくらいかかるかはその医師それぞれではありますが、皆さんきちんとやっていけておられます。結局、「立地」と「その医師の開業してからの努力」というのが大事、ということなんでしょうね。

いかがだったでしょうか。

 今回は「落下傘開業のメリット、デメリット」について私の考えを書いてみました。

この記事が先生のお役に立つことができれば幸いです。

※この記事はVoicyでの音声配信の内容をもとに、一部再編集してアップしています。

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記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

耳鼻咽喉科クリニックの理事長として日々の診療、理事長業務を行うかたわら、開業医・開業準備医師限定のオンラインサロン「ドクターズチャート」をよいこはこいよと2019年に設立。
現在オンラインサロンは会員数2600名超(2023年10月現在。)
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