クリニックの繁栄はクラーク(シュライバー)が握っている

クリニックの繁栄はクラーク(シュライバー)が握っている

医師のMMと申します。開業医/準備医師オンラインサロン「ドクターズチャート」の運営をしています。

今回は、クリニックにとってのクラーク(シュライバー)について、お話ししたいと思います。

そもそもクラーク(シュライバー)ってなに?

クラークって聞き慣れない人が多いと思うんですが、病院関係者なら分かっておられるかと思います。

シュライバーとも言いますね。まず、シュライバーって何語なんでしょうか。

ドイツ語のシュライベンという単語から来ているんですね。字を書く、とか書記する人、というような意味です。

どうでもいいですが、ボールペンのことを、ドイツ語ではクーゲルシュライバー、というようですね。

なんかかっこいいですね。

クラーク(シュライバー)ですが、病院やクリニックの外来で、診察する医師の横でPCに向かって座って書記などの仕事をしている事務スタッフのことですね。

我々も、研修医の時に教授の横についてカルテを書いたりしていました。

クリニックでも、ある程度患者さんが増えてくるとこのクラークをつけることができれば、大幅にクリニックを繁栄させることができるんです。

当院は、クラークが非常に熟練していて、診察時に私がキーボードを打ったりなんならマウスを持つこともほとんどなく、診察が終わってしまいます。

診察の労力が非常に減って本当に助かっていますね。

さて今日はクラークがなぜいるのか、そしてそのメリットデメリット、最後にどのようにこのクラークを育てるのか、という順でお話したいと思います。

クラークの話なんて、一般的には別に興味のないマニアッックなお話しかもしれないんですけど、それくらい実はクリニック運営には大事な話、ということだと思っています。

「クリニックの診療報酬を最大化するためには?」

さて、なぜクラークが必要なのかの話の前に、後で今日のテーマにつながるのですが、クリニックの診療報酬を最大化するには何の要素で決まるのか、ということに触れたいと思います。

当たり前の話にはなるのですが、クリニックを運営する上でどこに向かっていくべきかを考えるのには一旦基本に立ち返ることが必要ですから、すこし聞いていただければと思います。

クリニックの繁栄は売り上げが上がることが全てではありませんが、クリニックとてボランティアではなく利益が上がることで患者さんに還元できる業種ですから、きちんとした利益が出るように経営しないと、赤字続きでは潰れてしまいます。

利益が出てこそ、必要な医療機器を買うこともできます。

ということで、診療報酬を上げるということ目標として、これを分解していくと、これは単純に「単価✖️患者数」という計算式になるわけですね。

しかし単価については、他の業種と違って保険診療上平均より大きく逸脱すると厚労省より注意されますから、基本的には同じ診療科目での単価というのは大きく変わることはないわけです。

とすると、利益を上げるためには、患者数を増やす、ということしかない、ということになるんですね。

しかし、多くのクリニックは院長1人で診察していますから、その1人が診察できる人数がそのクリニックの売り上げの上限、ということになるわけです。

待ち時間が長くなると患者さんの足は遠のきますから、やはりそこが上限となりますね。

もちろん診療時間を伸ばすという方法もあるとは思いますが、人間の体力の限界もありますから、休みを減らして診療時間を増やせば増やすほど、院長の寿命は縮まることになると思います。

とすると、ある一定の診療時間にいかに効率よく満足度を落とさずに患者さんを見ることができるのか、ということがそのクリニックの売り上げを決めるポイントになる、ということなんですね。

特に例えば皮膚科や耳鼻科、眼科、小児科など、ある程度患者数をみないといけない診療科目では、やはり考えないわけにはいけない話だと思います。

そこで考えてもらいたいのですが、患者さんがクリニックに入ってきて、受付して、診療を受け、また受付で会計をして帰る、という作業をする際に、一番時間がかかる所はどこでしょうか。

これは当然診察している時間、ということになりますね。

つまり、ここが律速段階ということになるわけです。

律速段階、というのは、ある一連の事象があって、その事象の時間の大枠を決めている段階のことですね。

これが、例えば1人診察するのに15分かかる場合は1時間に4人、5分で済むなら12人ということになるわけです。

午前に3時間診察するとして、12人と、36人という違いになりますね。

人数で言うと3倍になりますから、単純に売り上げ3倍、ということになります。

もちろんただ効率を上げたらいい、というわけではなくて、患者さんの満足度を下げずにこれを達成することを考えないといけないわけです。

「診療にかかる時間を因数分解する」

そして今度は診療時間、というものを分解して考えてみたいと思います。

患者さんを実際に診察する時間は減らしにくいですから、まず減らすことができるとしたら、初めに患者さんの話を聞く問診の時間と、医者がカルテを書いている時間なわけですね。

そこで、初めに患者さんに聞く問診に関しては、診察室に入る前にスタッフに聞いておいてもらえれば、ここはある程度短縮できると思います。

ただこの話に関しては、今回はメインではありませんのでまたいつかお話ししたいと思います。

さて、それ以外のカルテを書く時間をどう減らすのか。それを他の人に任せてしまう。 そこでクラークが必要、ということになるわけですね。

「医師はカルテ入力にどれくらい時間がかかるのか?」

私は開業当時シュライバーを配置していなかったのですが、その時に一度診察にどれくらいの時間が余分にかかっているのか、調べてみたことがあったんですね。

通常患者さんの話を聞きながらPCのキーボードを打って、診察後もカルテの残りを書いて処方を入力したりします。

私はいわゆるブラインドタッチ、正確にはタッチタイピングといいますが、それができるんですが、それでも患者さんの話を聴きながら、できるだけ患者さんの方をみながらカルテ入力する、というのは非常にむずかしいです。

患者さんにとっては何となくこっちに集中されていないようで、気になる部分だと思います。

そして診察前および診察後にそのカルテを書いている時間はどれだけ早くても合わせて1分、長いと3から5分くらいかかるんですよね。

例えば患者さんが20人だったとしたら、その時間が平均2分だったとしても、最後の1人は40分も待ち時間が伸びることになるわけです。

ということで、ある程度の患者数になっていて頭打ちだけどまだまだ患者さんを増やしたいとおもっているのなら、クラークの配置が必要不可欠、と言えると思います。

今、当院はどうなっているのかというと、患者さんの診察が終わって、話終わるとその時点でカルテも出来上がっていて、処方さえもほぼ入力が終わっている状態になっていて、私は確認するだけ、という状態になっています。カルテ登録ボタンさえ私自身では押していないですね。

なので、患者さんに「お大事にー」と言った後すぐに次の人を呼び入れることが可能になっています。

「クラーク(シュライバー)を配置するメリット」

後、このクラークを配置する非常大きなメリット、私はひょっとしたらこれが一番大きいメリットだと思うのですが、先ほども触れたように、診察時に患者さんの顔を見て話を聞ける、ということですね。

よく患者アンケートなんかに書き込まれれる患者さんの不満に、医者がカルテのモニターばっかりを見てこっちを見てくれない、ということがありますが、患者さんとの会話の内容をスタッフが書いてくれていれば、私は患者さんの方をずっと向いていられますね。

これは患者満足度というものに非常に貢献していると思います。

もちろん自分で話を聞きながらカルテを書くより、スタッフに書いてもらう方が、内容としてもきちんと記録できます。

そして、クラークを設置するもう一つの大きなメリットは、受付スタッフから診察室や検査について、医師に言わないといけないことなどの情報をこのクラークが受けておける、ということですね。

診察している間も受付と診察室はまめに情報交換が必要なことが多いんですが、それをクラークが受け取って、いいタイミングで医者に伝えるようにすると受付スタッフも次の仕事に取り掛かれますから、非常に能率が良くなります。

そして、クラークは医師の横に常にいますので、患者さんの待ち人数や、誰がどれくらい待つことになっているのかを把握していますから、例えば待ち時間の間に検査に行っておいてもらう指示とか、診察する順番をどのようにコントロールするのかを決めることができます。

受付スタッフは診察室で起きていることがわかりませんから、受付スタッフにはこの辺りの采配は難しいと思います。

クラークは、クリニックの中での野球でいうキャッチャーの役割を担うのが、オペレーションをスムーズに運ぶのにはよい、と思っているんです。

診察する医者がピッチャーで、そのピッチャーに気持ちよく投げさせて、他のフィールドプレーヤーの指示を出すのがキャッチャーの役割ですから、まさにちょうどそんな感じですね。

院内の多くの情報がこのクラークに集まる、という設計でオペレーションを組むのがいいと思います。

そして、そのために、開業時に内装設計の時からそういう風にレイアウトを作っておくのがいいですね。

クラークの位置に受付からも検査室などからも到達しやすいような設計ですね。

いかがだったでしょうか。

本日はなぜクラークがいるとクリニックが繁栄するのか、についてお話ししました。

クラークができる人を多くすれば一人一人の負担は減りますから、そうなるまで時間はかかりますが、

院長がイライラせず、じっくりと育つのを待つのがいいと思います。

※この記事はVoicyでの音声配信の内容をもとに、一部再編集してアップしています。

Voicyではその他クリニック開業・経営に関する内容を中心にお送りしていますので、ご興味のある方は下記プロフィール欄よりご視聴ください。

また開業医/準備医師限定オンラインサロン「ドクターズチャート」にご興味のある先生は下記ページにて詳細をご確認ください。

記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

耳鼻咽喉科クリニックの理事長として日々の診療、理事長業務を行うかたわら、開業医・開業準備医師限定のオンラインサロン「ドクターズチャート」をよいこはこいよと2019年に設立。現在オンラインサロンは会員数3,400名超。Twitterフォロワー数20,000人、音声配信メディアVoicyパーソナリティ

患者数を増やすには?カテゴリの最新記事