集患・増患のために⑧〜再診数増の具体論 後編〜

集患・増患のために⑧〜再診数増の具体論 後編〜

前回までは下記の①から④までに触れてきた。

① 医師の医療技術、コミュニケーション技術

② スタッフの、患者を受け入れる態度

③ 受診のしやすさ

④ 落ち着ける内装設計

⑤ 期待を超える満足、特別感

⑥ トータルとして感じられる信頼感

今回は、⑤、⑥について考えていきたいと思う。

⑤期待を超える満足、特別感

消費者は、どのような消費をするとしても、一般的にこれくらいのサービス受けられるだろう、という無意識的な基準を持っている。

例えばラーメン屋における基準と高級ホテルにおける基準はもちろん違う。

ラーメン屋で、持ってきたスーツケースを席まで運んでもらえなくても何も感じないが、高級ホテルでランチする場合、スーツケースを邪魔にならない所に運んでもらえないと不快感を感じることもあるかもしれない。


では医院はどうか。前回のスタッフの接遇の項でも言及したが、基本的に一般的な飲食店レベルのサービスは期待されていないのが現状だろう。

しかもただサービスを受けるだけでなく、病気を治してもらう、という特殊な要素が入るため、どうしても消費者側が強くなり得ないパワーバランスになる。

さらにまだ競争が他より激しくない業種である。

こういったことから、「無愛想な受付のいる医院」がまだまだ存在する。


しかし、そこが勝機であると私は考える。

すでに過剰サービスが一般的になっている業種では、接遇でリードするのは非常に困難だが(歯科などは、かなり競争が激しくどこも非常に接遇レベルが上がっている)、医科では、それほど努力せずとも他よりマウントを取れるだろう。

具体例ー妻の実体験からー

例えを挙げてみる(当該科の先生の異論もあるかもしれないが、医療的なことは除外し、患者心理の一般論として聞いてもらいたい)。

最近私の妻が近隣の評判がよく流行っている内視鏡内科を受診した。その際、胃カメラをして欲しいという希望を持っていた。外来が混んでいる医院だし、先の日の予約を入れて帰ることになるだろうと予想していた。

そして受診、胃カメラの希望を伝えると、「朝ごはんは食べましたか?」という質問の後、食べていないことを伝えると、「では今からやりましょう!」と。もちろんこちらとしては通院回数を減らしたかったため非常に有り難かった。

妻は感動し、帰るなりやや興奮気味で、すぐ胃カメラを受けられたことを報告してきた。おそらく今後消化器疾患があれば、そこの医院に行くことになるのだろう。


十分流行って外来患者も多い医院であるにも関わらず、その日に胃カメラをして欲しいという患者のニーズに答えられるようシステムを作っていることに私も驚いた。

忙しくてもこういうオペレーションができるためには、以下の要素が必要だと予想する。


ハード面

○検査の準備をスタッフが速やかに行い、医師は即検査に取りかかれること

○検査の間外来が止まっても良いようにうまく予約制を運用すること

○その間の待っている患者のスタッフによるフォロー

○検査室と外来の、医師が行き来するのに無駄のない動線


ソフト面

○十分患者に評価されている医院であるにも関わらず、上記のようなシステムを作る、医師の献身性、向上心

○このシステムを理解し、納得して従事するスタッフのロイヤルティ


このようなマネージメントを成り立たせることで、患者の「期待を超える」ことができる。

もちろん、その日に胃カメラをしなくても、その医院の評価が落ちることはないだろう。それが一般的に予想される期待値だからだ。


しかしその期待値を超える「感動」があればリピートに繋がりやすくなるのだろう。

常に患者の期待値を予想し、それを超える提案をする、それが患者の心を掴むコツなのだろうと思う。

⑥トータルとして感じられる信頼感

ここには、私は2点の要素があると考えている。


1つ目、これは当然のことだがその医院の医療に対する信頼だ。

そこの医院に行けば、平均的かそれ以上の医療を受けられるという信用だ。

医師にとってはこの要素はあまり説明はいらないかもしれないが、考えてみる。

ここには「以前の受診で病気が治癒した」「病気の説明がわかりやすかった」というものから、患者心理としては「専門医である」「有名病院で働いていた」なども要素に入ることもあるだろう。

また、HPできちんと病気の説明がされている、ということも最近は加味されるかもしれない。

ただ、注意が必要なのは、医師が思う医療の質と、患者が感じるその医師の評価は少しずれていることがあることだ。

実際医師からすると、「専門医があるかどうか」はあまり意味を為さないことがあることを理解しているが、患者心理はずれている可能性がある。また、臨床系の英語論文を多数書いている医師は、医師からみると優秀な医師だが、患者には伝わらない。

この辺りの理解は必要だと思う。

2つ目、「あの医院に行くと何とかしてくれる」という、医療を超えた地域に根ざした信頼感だ。

例えば、家電を買いたいが何を買ったらいいか分からない。そういう時にここに駆けつけると親身になって聞いてくれて何か解決を出してくれるだろうという「近所の電気屋さん」的立ち位置だ。

「あそこに行けば何とかしてくれる」「そこで診れなくても必要な病院を紹介してくれる」そういう信頼だ。

そこには損得を度外視して親身になってくれているか、それが伝わることが重要だと思う。

とにかく、その領域の疾患のことで悩んだら、その医院が思い出される、そういう医院を目指すべきだ。

まとめ

①から⑥まで触れてきた。

再診に至るには、非常に多くのプロセスが必要で、自分で書いておきながら、中々に大変な道のりだ。

しかしこういったことを前提とし、医院側、患者側両者が意識的、無意識的に行動することによって、医院の選択が決まるということは知っておく必要があるのだろう。

私自身、もう一度見直していきたいと感じている。

記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

耳鼻咽喉科クリニックの理事長として日々の診療、理事長業務を行うかたわら、開業医・開業準備医師限定のオンラインサロン「ドクターズチャート」をよいこはこいよと2019年に設立。
現在オンラインサロンは会員数1100名超(2022年2月現在。)
Twitterフォロワー数13,700人、音声配信メディアVoicyパーソナリティ

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