集患・増患のために⑥〜再診数増の具体論 前編〜

集患・増患のために⑥〜再診数増の具体論 前編〜

今回は具体的に、初診で来た患者をどのように再診に繋げるべきか、について考えていきたいと思う。

再診率をアップさせるための6つの要素

私が大事だと思うのは以下の要素だと思う。

① 医師の医療技術、コミュニケーション技術

② スタッフの、患者を受け入れる態度

③ 受診のしやすさ

④ 落ち着ける内装設計

⑤ 期待を超える満足、特別感

⑥ トータルとして感じられる信頼感

このうち今回は①、②について考察してみる。(いずれも書くべきことが多くあるため、今回は重要なことに触れ、改めてそれぞれを一つのテーマとしていつかまた書いていくかもしれない。)

医師の医療技術、コミュニケーション技術

まず医療技術について。

その医院が手がけているのが、日本唯一の治療である場合、医師が無愛想でもやっていけるだろう。実際、難易度の高い手術の術者先生が、非常に無愛想で短気であることは時々あるが、患者はその先生目当てに殺到することはよくある。

しかし、一般保険診療外来で生計を立てている医院は、治療では大きく差別化することは難しい。

さらに、批判を覚悟で述べると、医師が感じる医療技術の高低は、患者にはほぼ伝わらない。

(もちろん、最低限の医療技術は必要だし、長期的には医療技術が高い医師の方が評価されていく印象だが、医師が思う以上にタイムラグがあり、相当長期的な話である。)

とすると、大事なのはコミュニケーション技術であるといえる。

患者に対する接し方が重要であることは以前のブログで述べた。

ここではその以前の内容に加え、さらに留意しておくべきことを考えていきたい。

まず、患者が何を求めてその医院に足を運んだのかをよく考えることが最も大事である。

マーケット用語に、「product out」と「market in」という言葉がある。

医療は、歴史的に明らかに「product out」の発想から始まっていると思う。

すなわち、知識が豊富な医師が、知識のない一般人の病気を治すために、医療を授ける、という図式だ。

今でこそ、informed consent など、患者の権利や意思が尊重される風潮があるが、他の業界と比べ、まだまだ医師が立場が上で、下である患者に施す、という考えがはびこっていることは間違いない。

もちろん一般的な小売店とは違い、患者が求めれば何でもする、というのは間違いである。医療的に医師が正しいと思うことのみを患者に対して提供するということは絶対的な前提である。

しかし、どちらを選択しても間違いではない内容のこと、患者の希望を叶えることができるようなことであれば、その意思を十分尊重すべきだと思う。


また、医師と患者の知識の差を常に意識しておかなければいけない。

医師にとって常識的な内容が、患者にとっては全く理解できないことはよくあるが、医師はそれに気づくことは非常に難しい。

例えば、医師にとって「この程度の病気は放っておいても治る」というものでも、患者は「この病気に一生悩まされるとどうしよう」と思っていたりするものだ。医師にとっては思いもよらず、そういう悩みに気づかないことがある。

こういう場合、その病気の見通しを告げる、というだけで患者は安心することもある。


また他の例として、例えば1%しか起きない手術の合併症について患者に説明するとする。

医師の頭の中では、1%の話であることがわかっている。しかし患者がその合併症のことを聞いている瞬間は、その合併症が頭の中の全体を占めている状態になる。

そうすると、患者にとっては非常に危険な手術という印象となり、不安感が強くつのるだろう。

そのずれを医師は理解し、きちんとしたパーセンテージであったり、その後に前向きな話を入れたり、患者が正確に合併症の程度を理解できるよう説明しないと、患者との関係は徐々にこじれていくだろう。

相手の理解度を常に把握できているよう、心がけないといけない。


私の知る、ウハクリで信頼できる開業医は皆、聞かれたことに数倍の答えで返してくる、教え好きで面倒見がいい医師だ。

損得を度外視して、前にいる患者の力になりたい、という姿勢がさらに患者を呼んで、結果ウハクリとなっているのだろう。

そして最後にもう一つ、患者が診察室に入ってくる時はカルテを見ずに、患者を見て迎え入れる。患者の目を見て話をする。診療最後には笑顔になる。

当たり前のことだが、非常に大事だと思っている。

この医師のコミュニケーションについては、まだまだ書ききれないので、またいつか改めてまとめてみたいと思う。

スタッフの患者を受け入れる態度

クリニックにとって、私が医師の接遇以上に大事だと思うことは、スタッフの接遇だ。

正直、クリニック職員の接遇レベルは一般的サービス業の接遇レベルより低いことが多い。

これは、同じ人間でも、飲食店に行くメンタルと、医療機関に行くメンタルが違うことから、それに店側(医療機関側)が合わせていることによる。

すなわち、クリニックに患者は「病気を治してもらいにいく」という意識があるため、飲食店より高い接遇を期待していないことが多い。

また、まだまだ競争の少ない業種であるため、愛想がそれほど良くなくても患者が来るという場合もある。

それゆえスタッフも接遇レベルを上げなくても成立していることが多い。

しかし、それではある程度で頭打ちが来ると思っている。

患者が医院に入って、帰るまでの間、医師と触れている時間より、スタッフと接している時間の方が長い。その時間が快適に過ごせていないと、患者は徐々に離れていくだろう。

当院は、採用の際、接遇レベルがある程度見込める応募者を取るよう努めているが、そうすると前勤務先が、カーディーラー、フィットネスクラブ、ウェディングプランナー、保育士など、医療機関以外のスタッフが多くなった。

他の業界では当然とされている接遇レベルを、クリニックでも保つことを目標とするのがよいと思っている。

そして私が考える、スタッフの接遇のポイントは以下だ。

患者の思いを正確に理解し、受け入れる。否定は極力しない。

とにかく居心地がいい空間を作る。

医師の接遇のフォロー。

それぞれを簡単に説明する。

①患者がどういう目的で受診に来たのか、何を求めているのかを必ず考える必要がある。そしてそれを簡潔に医師に伝えることで、診察が非常にスムーズになる。

その患者の思いを聞き取る際、否定的な発言、態度は絶対とってはいけない。患者は医師に厳しい態度をされても受け入れることがあるが、スタッフにそういう態度を取られると、怒りをあらわにする人もいる。

スタッフは、いくら患者が納得できないことを訴えていても、まずはそれを受け入れ、医師にその患者の意思を伝えるべきだ。

受付やスタッフの段階で、何らかの患者の意思を断ることは極力するべきではないと考えている。

②例えば患者が待合室でも待っている時も、それぞれの患者が何を考えて座っているかをよく観察しておかなければいけない。

待ち時間が長くてイラついていないか、テレビのチャンネルに不満はないか、足が悪くて椅子から立ち上がりにくくないか。

とにかく患者にとって居心地がいいと感じるよう、コンシェルジュのような精神で対応するのがよいと思っている。

③医師はもともとコミュニケーションが苦手な人も多いし、そもそも一人一人とじっくり話をしている時間がないことが多い。

しかも患者は医師には聞きたいことを遠慮して聞けていないこともよくある。そういった、患者の不満を感じ取り、診察後にフォローすることができれば、患者は満足するだろう。

他にも多々述べたいことがあるが、これもまた項を改めて書いていきたいと思う。

記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

耳鼻咽喉科クリニックの理事長として日々の診療、理事長業務を行うかたわら、開業医・開業準備医師限定のオンラインサロン「ドクターズチャート」をよいこはこいよと2019年に設立。
現在オンラインサロンは会員数1100名超(2022年2月現在。)
Twitterフォロワー数13,700人、音声配信メディアVoicyパーソナリティ

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