集患・増患のために⑤〜再診増のための基礎知識〜

集患・増患のために⑤〜再診増のための基礎知識〜

さて、前回は新患の来院動機について説明した。その中で、口コミの要素が非常に重要であることを強調した。

この口コミが広がるためには、新規来院患者が受診した後、その患者が自分がまた次に病気になった時、また来ようと思う意識が芽生えないといけない。

すなわち、口コミの発生は、患者が再診したいと思うことと同義として考えていく。

再診数を増やすための基礎知識

具体的に再診を増やすアプローチに言及するにあたり、今回のブログではまず知っておくべきと私が思う知識を紹介したい。

以下の2つ。

1 口コミ率、リピート率による患者数の変化(出典:「患者に選ばれるクリニック」)

2 来院、再診、口コミに至るプロセスの要素分解(つけ麺屋を例に)

クチコミ率、リピート率でどれくらい患者数は変わる?

では1から。

1 口コミ率、リピート率による患者数の変化

口コミの重要性につき、蓮池林太郎氏著「患者に選ばれるクリニック」に分かりやすい説明があるため、引用する。

○口コミによる患者数の変化について

A医師:非常に評判の良い医師。診察すると20%の確率で患者が新規患者に口コミを広げる医師。

B医師:まあまあ評判の良い医師。診察すると10%の確率で患者が口コミを広げる医師。

<最初の10日間>

A医師:100人を診察して20人紹介される

合計 患者数 120人

B医師:100人を診察して10人紹介される

合計 患者数 110人

<次の10日間>

A医師:120人を診察して24人紹介される

合計患者数 144人

B医師:110人診察して11人紹介される

合計患者数 121人

<100日後>

A医師:100人×1.2の10乗

合計患者数 619人

B医師:100人×1.1の10乗

合計患者数 259人


○リピート率について

逆に、リピート率において、どのような差が出るのか。

A医師:90%の患者がリピートする医師

B医師:80%の患者がリピートする医師

<100日後>

A医師:100×0.9の10乗

再診患者 35人

B医師:100×0.8の10乗

再診患者 11人

もちろんこれほど話は単純ではないだろうが、たった100日でこれほどの差になる可能性があるのだ。


このように、口コミがなぜ重要で、リピートされることが必要なのか、わかっていただけたと思う。

クチコミ患者が発生するプロセス

次に、患者に再診してもらうための、具体的な留意点に触れる前に、人はどのようなプロセスで再診、口コミをしようとすることになるのか、考えていく。

2 来院から口コミに至る要素分解 

ここで一例であるが、ある人が新しいつけ麺屋に来店し、そこにリピートし、口コミを広げるメカニズムを考えてみる(まったくのフィクションであり、私の経験に基づく、完全な妄想である)。

長くなるが大事なことなので付き合ってほしい。

テレビでつけ麺屋の特集を見、知らなかった「つけ麺」というものの存在を知る →

家族にそのことを話してみると、家族はつけ麺のことを知っており、興味があった →

ネットで「つけ麺 地域名」で検索 →

食べログで、ある店が見つかり、口コミでいい評価、点数も3.4点→

その後忙しくしばらく忘れていたが、近くに住む友人がそのつけ麺屋の話題を出し、美味しかったと言っていた →

興味が湧き、次の週末に家族で来店計画、ちょうど行きたい時間が開いていた →

週末、店に訪れる。道もわかりやすかった →

入ると清潔感があり、ラーメン屋としてはかなり綺麗で居心地が良さそう。人もそれなりに入っていた →

メニューが写真が多くイメージしやすかった。オススメのつけ麺を注文 →

スタッフは元気が良く、小さな子供連れであることを気にして色々手伝ってくれた →

しかし注文してから品が来るまで時間がかかり、一度声をかけた →

その時のスタッフの対応は非常に適切だった →

食べてみると、魚介類ベースで意外な味で美味しかったがそれほど突出しているわけではなかった。スープは今までに見たことがない真っ白で濃厚な見た目でインパクトがあったため写真を撮った →

壁には店長の材料へのこだわりが書かれており、納得しながら食べ、スープが他の店にはない味なのかと思い、美味しく感じ出した →

店長は強面だったが、笑うと人懐っこく、丁寧な接客だった →

その後の会計はスムーズで、待たせたことに対する謝罪もあり、特別に次の割引券をくれた →

そして後日、会社の近くでラーメンを見るとそのつけ麺屋を思い出し、一人で再来。

その際ちょうど友人とSNSで連絡中であり、そのつけ麺屋を紹介した →

2回目であるにも関わらず、「いつもありがとうございます」と言われた →

帰って家族にその話をした。また家族でいく約束になった。

さて、皆さんはどのように思っただろうか。

私たちがどこかに訪れたり、何かを購入したりする時は、かなり無意識的に動いているものだ。しかし結果その選択をしているということは、何かしらの理由がそれぞれの行動に伴っている。

上述の例では、実際の味はそこそこだったとしても、

「接客がよい」

「綺麗で居心地が良い」

「店長がスープをこだわって作っているようだ」

「ネットの口コミがよかった」

「怖そうに思える店長が意外と優しかった」

「最後に謝罪もあり、2回目も覚えていてくれているという特別感」

などという要素でリピートし、口コミを広げるに至っている。


クリニックも全く同じである。

人が無意識的にその医院を選ぶには何かしらの理由があるものなのだ。


次のブログでは、以下の要素につき、考えていきたい。

○医師の医療技術、コミュニケーション技術

○スタッフの、患者を受け入れる態度

○受診のしやすさ

○落ち着ける内装設計

○期待を超える満足、特別感

○トータルとして感じられる信頼感

記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

耳鼻咽喉科クリニックの理事長として日々の診療、理事長業務を行うかたわら、開業医・開業準備医師限定のオンラインサロン「ドクターズチャート」をよいこはこいよと2019年に設立。
現在オンラインサロンは会員数1100名超(2022年2月現在。)
Twitterフォロワー数13,700人、音声配信メディアVoicyパーソナリティ

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