クリニックの予約システム選びは超大変!

クリニックの予約システム選びは超大変!

医師のMMと申します。開業医/準備医師オンラインサロン「ドクターズチャート」の運営をしています。

今回は、最近では導入が当たり前になってきているクリニックの予約システムに関して考えていきたいと思います。

クリニックの予約システム選びの2つの考えるべきこと

クリニックの予約って非常に重要で、これがきちんと機能していないと患者さんの足が遠のく原因になるんです。

だからといって患者のニーズに合わせ過ぎるとクリニックとして労力が増えすぎてオペレーションが難しくなってスタッフも疲弊する、ということも起きますよね。

そこで今回は、そもそも予約システムにはどのような種類があって、それぞれメリットデメリットはどんなものがあるのか、さらにそもそも予約の仕組みを導入する必要があるのか、についての私の考えをお話ししてみたいと思います。

まず大きく2つの重要なポイントを選択しないといけません。

それは、

「時間予約か順番予約か」という選択と、「電話予約を受けるのか受けないのか」

という選択をしないといけないと私は思っています。

・予約システム選びのポイント「時間予約か順番予約か?」

まず時間予約と順番予約についてですね。

それぞれお分かりだと思いますが説明しますと、いついつの何時の予約を取るというのが時間予約で、

その日の診療の順番を取るのが順番予約ですね。

クリニックでの時間予約のメリット・デメリット

時間予約のメリットはいうまでもなく予約時間に行けば待ち時間なく診察してもらえる、という利点です。

これはかなり大きいです。

さらに慢性疾患などの患者さんなら、毎月忘れず受診して薬をもらう必要がある、というケースも多いでしょうから、患者さんのリマインドという意味も大きいですね。

そしてこれはクリニックの経営面としても重要な要素だと思います。

一方デメリットは、直接来院する患者さんが多いと予約時間通りにならず、不満が出るということですね。

診療科目にもよるんですが、私の体感では1日に80人〜100人以上の患者さんが来るようになると、この時間予約は機能しなくなる印象ですね。

私が経験した大学病院や総合病院などで、いつも外来がパンクしているような状況だと、時間予約をしていても3時間待ちというようなことがありました。

こうなってくると、

・改善のためには予約枠を減らして直接来院の方中心にするか

・順番予約中心に変えるか

・根本的に診察スピードを上げるか

・場合によってはもう一人先生に来てもらうか

というようななんらかの対策を取らないとクリニックの評判を落としてしまうことになりかねないと思います。

クリニックでの順番予約のメリット・デメリット

次は逆に順番予約についてですね。

耳鼻科や小児科などの急性疾患がメインの科目なら、順番予約を選択されるところが多いと思います。

この順番予約は順番制のため、そもそも待ち時間が出るのが前提で、ずっと病院で待つのではなく家で待機できて時間が来たら病院に行く、というものですね。

そして順番通りですから、時間予約と違って予約の時間に診察してもらえない、という不満はなくなります。

一方で大きなデメリットとして、順番を取っていない人をどこに入れるのか?という問題を考える必要があります。

これに関しては後で当院の例を挙げる時にお話ししたいと思います。

最近では時間予約、順番予約両方できるハイブリッド予約というものもあって、当院はこれを採用しているんですが、今の所非常に機能していますね。

予約システム選びのポイント「電話予約は受ける?受けない?」

さて次に電話予約を受けるのか受けないのかについてなんですが、ここもまた大きな悩みどころです。

なぜかというと、電話予約を受けるようにすると、ある程度患者さんが増えてきてはやってくると、患者さんにとっては非常にメリットがありますがスタッフが一人電話に張り付く必要が出てきます。

そのためには一人多くスタッフを雇用する必要が出てきて人件費が増えますね。

さらに電話が常につながらない状態になると、他の患者さんの電話を受けられなくなります。

じゃあ予約専用電話を作ると良いかと思われるかもしれませんが、得てして患者は予約専用電話にかけてくれるわけではなく、クリニックの代表電話にかけてくることになります。

そうするとスタッフはその対応に追われることになります。

最近は自動音声電話予約システムも目にするようになってきました。

ですが高齢者が自分の診察券番号や、診察希望時間をボタンを押して入力するのはハードルが高いと思います。

最近、私のかかりつけの歯医者さんがあって、そこに予約の電話をすると、自動音声に変わっていたんですね。

そしてその自動音声をずっと待っていても実際のスタッフにつながらなくて、結局面倒になって予約を取るのを止めた、ということがあったんですね。

やはり自動音声は患者満足度を下げるのではと私は思っています。

当院で起こった予約にまつわる問題

最後に当院で起きた予約にまつわる問題について話してみたいと思います。

当院は、開業して長い間順番予約のみだったんです。

そして電話予約は受けずにインターネットによる順番予約のみとしていました。

そうした理由は、私の診療科目は急性期疾患がほとんどで、一般的には時間予約が機能しないと言われている診療科だったので、他の先輩方と同じようにそうした、ということだけで決めました。

そして、この順番予約のみという体制で起きた問題は、大きく分けて2つあるんですね。

一つ目は、「直接来る人とインターネット予約で来る人との順番をどちらを優先するのか?」という問題ですね。

インターネットで順番を取る人は自分の時間が来る直前に来院してすぐ受診できるのですが、直接来て受診している人はどうしても長時間待合室で待つことになってしまって、直接来院の人の不満が出るんですよね。

だからと言って直接来る人を優先してインターネットの枠を減らすと、今度はネット予約が入らなくなってこちらのクレームが出るんですよね。

もう一つの問題は「順番に遅れた人をどうするのか?」という問題ですね。

これに関しては通常数人くらい待ってもらって入ってもらうことが多いかと思うんですが、そうするとある意味遅れてきた方が特ということにもなってしまいかねません。

土曜日の患者さんが多い時なんかは、皆がこう考えていて、待ち人数が20人なのに待合室に誰もいない、ということが起きたことがあります。

じゃあ遅れると罰則として最後に回す、ということをすると、これは相当厳しくて、やはり患者の不満につながります。

上記のようなことがあり悩んだ結果、当院は結局時間予約と両方導入することで間を取ったということなんですね。

とまあいろいろなことを考えていると、結局予約システムなしで来た順で見るのが一番揉めなくていい、 とちゃぶ台返しみたいな気持ちになったりもするんですが、他のクリニックはどこも予約システムを導入している昨今、予約システムがないクリニック、という割り切りをする勇気はやはり私はないですね。

というわけで最後にまとめてみますと、

患者数が少ない時は正直どんな仕組みでも特に問題なく機能すると思いますが、ある程度患者さんが増えてくると患者さん全員が満足する仕組みは存在せず、患者サービスを追求して人件費や電話回線も投入して電話予約を受けるのか、予約はネットと来院のみにするのか、ここはクリニックとして考え方を決めて患者さんに表明しないといけない、ということなのだろうと思います。

ただ、途中で予約の仕組みを変えるのは相当慎重にしないといけなくて、患者数が多くなったからといって今までやっていた電話予約をやめたりするとクレームに繋がったり来院をやめる動機になったりする可能性もあります。

予約システム新たに入れる際は今後の展開を考えてよく検討すべきだと思います。

いかがだったでしょうか。

最後に夢のような話かもしれないですが、今後人工知能などを用いて皆が納得するような予約システムを作るということってできないのでしょうか?技術的にもまだ難しいんでしょうか。

どなたか詳しい方がおられれば、ぜひ教えてもらえたらと思います。

※この記事はVoicyでの音声配信の内容をもとに、一部再編集してアップしています。

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記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

耳鼻咽喉科クリニックの理事長として日々の診療、理事長業務を行うかたわら、開業医・開業準備医師限定のオンラインサロン「ドクターズチャート」をよいこはこいよと2019年に設立。現在オンラインサロンは会員数3,600名超。Twitterフォロワー数20,000人、音声配信メディアVoicyパーソナリティ

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