なぜクリニック継承って失敗する?

なぜクリニック継承って失敗する?

医師のMMと申します。開業医/準備医師オンラインサロン「ドクターズチャート」の運営をしています。

今回はクリニックの継承開業について話してみたいと思います。

とくに今回は、継承開業に興味がある、今勤務医をしている先生に知ってもらいたい内容です。

クリニックの継承開業ってどういうことかと言いますと、すでに開業しているクリニックがあって多くの場合数十年経過していたり、そこの院長が高齢になってきたりして別の若い医師に後を継いでもらうという形の開業です。

コロナの感染拡大以降、以前よりこの開業のスタイルがクローズアップされていたような印象がありますね。

私たちの開業医サロン、あとはツイッター経由でもクリニックの継承案件情報はよく集まってきます。

私の知っている先生は継承開業がすごくうまくいって、初めからロケットスタートを切って数年で拡大移転しようと企んでいる先生もおられます。

このケースのように、この継承開業って一見メリットしかないように思うんですが、実際は中々うまくいかないことも多いんですね。

まず、それがなぜなのか?そして継承を考えている先生に対して、こうすれば継承がうまくいくという私が考えるコツ、これをお伝えしていきたいと思います。

クリニック継承のメリットデメリット

まずは継承開業のメリットデメリットについてですが、これはよく言われるところなので簡単に触れていきたいと思います。

そのメリットデメリットを説明したあと、今回はなぜクリニック継承はうまくまとまらないのか、その理由を説明して、最後に継承開業を考えている先生はどのように準備していくべきなのか、

この順でお話ししたいと思います。

クリニック継承のメリット

まずは継承開業のメリットには、どのようなものがあるのでしょうか?

第一には初期出費が少なくて済む、ということですね。

場合によっては新規開業の10分の1くらいの費用で開業できることもあります。

そしてこれが最も大きいメリットだと思うんですが、ゼロからのスタートではないので患者さんが元々いる状態で、立ち上がりがいいので経営上も早く安定するということですね。

大きくこの2点がメリットだと思います。

クリニック継承のデメリット

では、デメリットは何があるでしょうか。

まずクリニックが古いということがあります。

結局内装を張り替えたり、新しい医療機器を入れ直したりしないといけないということもあり、後から費用がかかるということはよくあります。

あとは、前院長とうまく一緒に診察をして引き継げる方が患者さんがそのまま残ってくれるのでいい部分ではあるのですが、

診療スタイルというのはそもそも医者ごとに大きく違いますし、さらに世代が違うと全く違うこともありますから、前の先生のファンだった患者さんが合わなくて離れていくということもあります。

「前の先生はこうしてくれたのに!」ということが、自分は絶対したくないという医療だったという場合もあるでしょうから、そこでのストレスは間違いなく起きるポイントだと思います。

そしてもう一つは、スタッフの問題ですね。

前クリニックのスタッフが残っている場合やはり前の医者のやり方になれていて、新しい医者とぶつかるという話はよく聞きます。

また給料がすでに高くなってしまっていることもあり、これを下げる交渉をする必要が出てきたりしてぶつかる、ということもあります。こういう人事のストレスを開業当初から抱えてしまうことも多いです。

これらのメリットデメリットを踏まえて、メリットが大きいと判断できれば継承開業というのは有利な開業方法だと思います。

さらに以前より新規開業の立ち上がりが悪くなってきている時代ですから、継承でクリニックを開業するというのはリスクを下げられるいい方法ではあると思います。

でもなぜかこの継承開業っていうのは、あまりうまくマッチングしないような印象があります。

これはなぜでしょうか。

クリニック継承開業が失敗しやすい理由

まず後継を探しているクリニック側と、継承開業を考えている医師の置かれている環境が違いすぎるということがありますよ。

高齢開業医と若手勤務医っていうのはリアルでも、今ならネット上でも接点が少ないですよね。

さらにどちらもおおっぴらに開業を考えていたり、引退したりしたいということを言いません。

そういったときに継承を手がける会社などがあるんですが、多くは手数料が相当高かったりして中々依頼しにくいということもあるようですね。

そしてもう一つ、後継を探しているクリニック医師と開業したい医師との、継承に対するスピード感、温度差が大きい、ということがあります。

どういうことかというと、例えば引退したい医師の側は、もういつでも後継者がいたら早くきて欲しいと思っていることが多いんですよね。あとは急な入院とか場合によっては急な死亡、というケースもあってクリニック側としては急いでいるケースもありますね。

でも一方で開業したい医師の側は、それほど急いでいないことが多いんです。

そもそも大体勤務医で普段の仕事に忙殺されていたり、医局の人事で動いていて、急に辞めると周りに迷惑がかかるというようなことがあって数年のスパンで考えていることが多いんですね。

なので急に来月から来て欲しいと言われてもそれは無理、ということがあるんですよね。

そして結局大手クリニックチェーンなどがかっさらっていく、ということがあったりします。

クリニックを継承したい先生がすべきこと

ではこういうことを踏まえて、継承で開業したい医師はどうしていくといいのでしょうか。

まずはクリニックの継承開業ってどれくらいのお金が動いてどのような感じになるのか、情報を得ておくことが必要だと思います。

急にお宝のようなクリニックの情報が来ても、それが相場よりいいのか悪いのかそれを判断できるくらいの知識を持っておくべきです。

情報をとにかく集めてどういったケースなら自分がやっていけそうなのか、想像しておくことが必要です。

例えば不動産投資や株式投資をする時もいろいろ勉強すると思うんですが、この開業も一種の投資とも言えますからまずは十分情報を集めて勉強しておくことが大事です。

そしてここが一番大事だと私は考えているんですが、本当にいい継承案件というのは急にやってくるということが多いですから、急に話が来たときに受けられるような準備をするということが大事です。

ただ、これがとても難しいのは私も医局所属の勤務医でしたからよく分かります。

医者の世界は狭い世界ですから周りとの関係が非常に気になる、というのは本当によくわかります。

ですが、例えば3年後に開業すると決めたなら、最後の1、2年はそういったことに理解のある部長のいる病院に異動できるようにするとか、

場合によっては非常勤勤務になるとかいつでもすぐ動けるようにして用意すると人より早くいい継承案件を手に入れられると思います。

 とにかく人と違う結果を出したいのなら人と違うことをしないとその結果は出ない、ということなのだと思います。

いかがだったでしょうか。

開業って人生の一大イベントですから中々踏み出しにくいということは非常によくわかります。

その中で継承というのはそのリスクを大きく下げられることにはなりますから、うまくやれば本当にメリットがありますよね。

まずは情報を集めて知識をつける、これが大事だと思います。

この記事が先生のお役に立つことができれば幸いです。

※この記事はVoicyでの音声配信の内容をもとに、一部再編集してアップしています。

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記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

耳鼻咽喉科クリニックの理事長として日々の診療、理事長業務を行うかたわら、開業医・開業準備医師限定のオンラインサロン「ドクターズチャート」をよいこはこいよと2019年に設立。現在オンラインサロンは会員数3,000名超。Twitterフォロワー数18,000人、音声配信メディアVoicyパーソナリティ

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