
医師のMMと申します。開業医/準備医師オンラインサロン「ドクターズチャート」の運営をしています。
クリニック開業月の重要性とは?
さて、本題です。クリニックを開業する時期はいつがベストか、と言うお話しですね。
病院とか診療所って繁忙期と閑散期があって、おそらく病院よりクリニックの方が季節変動が激しいことが多いんですよね。
例えば耳鼻科とか小児科なんかは冬の風邪が流行ったり、アレルギーの時期は忙しくって、夏は大体暇なんですよね。
場合によっては2倍くらいの患者数が違うこともありますね。
ただこの季節変動というのは、診療科目によって全然違うようですね。
例えば糖尿病内科の先生に伺うと、季節変動は1、2割くらい、とおっしゃっていましたよね。
まあでも大抵の診療科目はある程度変動はあると思うんですよね。
で、その忙しい時に始めるべきなのか、暇な時に始めるべきなのか、ということを、私の経験も踏まえて今日は考えてみたいと思います。
繁忙期と閑散期を考慮したクリニック開業時期の選択
まず結論から言うと、一般的にはもっとも繁忙期の月の、1、2ヶ月前に開業するのがベストだと言われていますね。
例えば内科とか耳鼻科なら、大体寒くなってくる11月くらいから忙しくなって来ますから、9月か10月くらいに開業するのがいいと言われているんですよね。
それはなぜかというと、いきなり繁忙期に開業すると、院長もそうですけどスタッフも慣れていなくって、院内のオペレーションがうまくいかないケースって結構あるんですよね。
患者さんをすごく待たせてしまったり、会計間違いが出たりとか開業当初は落ち着いていてもバタバタしたりしますからね。
で、その時に対応に不満を感じた患者さんはもう来てくれない、ということになりますよね。
実際私の知り合いのクリニックで開業初日から大盛況だったクリニックは、患者さんを捌ききれなくて不満が殺到してしまって、診察券番号の若い人は今は全然来てくれていない、と言ってる先生もいましたね。
なので暇な時期に始めるのが、スタッフにとっても患者さんにとってもベスト、ということは言えると思いますよね。
資金繰りとクリニック開業時期の影響
じゃあ閑散期に始めるのがいいか、というと話はそう簡単でもないんですよね。
これは何が問題になるかというと、資金繰りですね。
開業している先生は当然ご存知だと思うんですけど、保険診療報酬の、社保や国保からの振り込みって2ヶ月遅れるんですよね。
これってどういうことかというと、例えば5月に開業するとしますよね。すると、5月に入ってくるお金って、患者さんの自己負担金分だけなんですよね。
なので、大体3割、高齢者は1割から2割、あとは公費負担の方は〇円だったりしますから、平均してその月の売り上げの2割分くらいしか入ってこないんです。
ということは、その月の売り上げが200万円だったとしても、実際は40万円くらいしか入ってこないんですよね。
もし家賃が50万円だったとしたら、それだけでその月は当然キャッシュはマイナスですし、ここにスタッフの給料のしはらいとか色々出てくるわけなんですよね。
なので数十万とか百万以上キャッシュアウトしてしまうことになるわけです。
で、翌月もまだ入って来ませんから、患者さんがもしそれほど増えて来ていなかったらまた同じだけキャッシュアウト、ということになりますね。
なので、当然運転資金を十分に用意しておかないとキャッシュがなくなってしまったら、スタッフの給料も払えなくて大変なことになるわけなんですよね。
なので、経営のことを考えると初めから患者さんが多い月に始めた方がいい、ということになるのはお分かりになると思います。
で、一般的に言われているのは、繁忙期の入る月の1、2ヶ月前に開業して、1、2ヶ月でクリニックのオペレーションを作り上げて、繁忙期に向かう、というのがベスト、ということになると思います。
実体験から見るクリニック開業時期の課題と成功要因
でも、さらに実際は話はそんな簡単ではないんですよね。
ここで私の話をしますと、私は3月末に退職して、6月に開業したんです。
6月って、私の診療科目においてはどんどん暇になっていく時期だったんですよね。
なので先ほど言った法則には全く反してる時期に開業したことになります。
なんでそうなったかというと、これは退職の時期が決まっていたからなんですよね。
なので、もし年末開業、ということになると、その間はバイト先を探して食い繋がないといけなくなりますし、もしその数ヶ月の間に他の先生がその近くで開業してしまったら、もうどん底ですよね。
そもそもその間の家賃はどうするのか、ということになりますもんね。
で、私は退職から少しだけ余裕を見て2ヶ月空けて開業することにしたんですね。
でどうなったかというと、開業して数ヶ月は全く患者さんは増えなかったんですよね。さらに4ヶ月目には減ってしまったんですよ。
さすがにこの時は凹みましたよね。いくら閑散期に向かう時期と言っても、実際減ってしまうとこれは辛かったですよね。
で、10月くらいになって、寒くなりだすと、風邪ひいた患者さんがこられ出しまして、やっと黒字が見えてくるようになって、ホッとしたのを昨日のことのように思い出しますよね。
もちろんその間は通帳の金額はどんどん減っていきますもんね。
で、10月に増え出してからは、やっとお金的にも気持ち的にも落ち着いた、という感じでしたね。
でもよかったこともあって、それは、その繁忙期が来て忙しくなって来た時はスタッフも私も仕事に慣れていましたから、忙しくなってからも特に大きな問題なくクリニックをオペレーションすることができましたよね。
ただその時期までのメンタルは少しきつかったですけどね。
クリニック開業時期が長期的な経営に与える影響
で、トータルで考えると、1周して1年経ってしまうと、これはもはや関係なくなると思います。
実際私の周りの先生方も、開業の月がいつかなんて、関係なく流行っている先生は流行ってますしね。
開業月を失敗してうまくいかなかった、という先生は長い目で見ればおられないですよね。
ということで、結論としては、開業月が悪そう、ということで開業を遅らせるというのは意味がない、ということですよね。
その間に競合医院ができてしまうと元も子もないですもんね。
ただ、その間の運転資金を十分用意しておくということと、患者数が増えていかない時に落ち込みすぎないメンタルを覚悟しておく、ということができれば、それでいいと私は思いますね。
もちろん、1、2ヶ月くらいとかなら、いいタイミングがあるのなら、それに合わせて開業する、というのははいいかもしれませんね。
いかがだったでしょうか。
あと、追加なんですけど、場所によっては、例えば元々競合がいっぱいあって繁忙期のピークに開業しても全然立ち上がらない可能性のある場所とかなら、繁忙期に開業しても全く問題なかった、という先生もおられましたね。
でも逆に冒頭でも言ったんですけど、その診療科目が全くない、という良すぎる立地に開業した先生は、それほど繁忙期でなかったのにいきなりものすごい人数が来られて、うまくオペレーションできなかった、という先生もおられました。
この辺りは場所次第、という部分もおおきいかもしれませんね。

記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)
耳鼻咽喉科クリニックの理事長として日々の診療、理事長業務を行うかたわら、開業医・開業準備医師限定のオンラインサロン「ドクターズチャート」をよいこはこいよと2019年に設立。現在オンラインサロンは会員数3,700名超。Twitterフォロワー数20,000人、音声配信メディアVoicyパーソナリティ。