親子でのクリニック継承って意外と大変!

親子でのクリニック継承って意外と大変!

医師のMMと申します。開業医/準備医師オンラインサロン「ドクターズチャート」の運営をしています。

以前に第三者継承、親族ではない他人のクリニックを継承する話をふれました。その記事はこちらからご確認ください。

今回は親子でのクリニック継承についてお話してみたいと思います。

何も知らない人からすると、親が流行っているクリニックをやっていてそれを継ぐだけなら非常に恵まれていていいよね。

と思う人もいると思うんですが、実際は話はそんな簡単ではなく、むしろその状況だからこその悩みや問題も多いようなんですよね。

私自身は新規開業ですから、今回は人から聞いた話ということになるのですが、実家がクリニックの様々なパターンの先生方とたくさん出会い、実際の先生方から多数の感想を聞いていますので、それを今回はまとめてみたいと思います。

まずは継承開業の難しさ、

そして継承がうまく言っているケースはどんな特徴があるのか、

という順でお話ししたいと思います。

実家が整形外科クリニックのA君のケース

まず私が思い出すのは研修医の時だったんですが、研修医の友人で、家が整形外科クリニックで整形外科を目指しているA君という友人がいたんですね。

そして将来の人生設計はどうする?みたいな話が研修医の中で出ますよね。

その時に私が軽い気持ちで、A君は継ぐ家があるからいいよね、みたいなことを言ったんですね。

するとそのA君はかなり怒った顔になって、親子継承は親子継承で大変なことがあるんだよ!と言われたんですよ。

私はその時はピンと来ずに、なんだかわからないけど怒らせてしまったなあ・・・という気分だけが残ってしまい、それ以降は、実家がクリニックの先生に会ってもそういったことは言わないようにしようと思いました。

理由はその時はわかっていなかったんですけどね。

結局A君は最近、家のクリニックを継がずに全く別の場所で新規開業しました。

そのA君以外にも、周りの色々な継承のケースを見て、継承するクリニックがあるって意外と大変なことが多いんだなあと思うようになったんですよね。

他にも私の知り合いで親子で一緒にクリニックをやっていて、仲が悪くなって親子で裁判になるところまで揉めてしまった人もいますね。

実家がクリニックで子供が医師でも色々なパターンがあって、

・親のクリニックを継ぐパターン、

・親とは違う場所で新規開業するパターン、

・開業せず勤務医のままでクリニックは閉院するパターンなど、

親と子が同じ診療科目を選んでいても結構色々な形がありますね。

ではここからは、事情を知らないとすごく恵まれているように見える、親のクリニックを継承するということの難しさは何があるのか、考えてみたいと思います。

親子でのクリニック継承が難しい理由「継承するタイミング(年齢)」

まず、継承するタイミングの難しさがありますね。

どういうことかと言うと、例えば大体医師って結婚が遅かったりするので、例えば親が33の時の子供という状況だと、その子供が医者になるのは早くて24歳ですから、親は57歳、浪人することも普通ですから、親はほぼ還暦、と言うところですよね。

そして医者って一人前になるのに時間がかかりますから、開業を考えるのは早くても10年目、場合によっては20年目ということもザラです。

とすると、その時は親は80歳になっているわけです。

そこまで果たしてクリニックを繁栄させていけているのか、という問題はありますよね。

じゃあ早く継いだらいいんじゃない?と思われる人もいるかもしれませんが、医師として一つの専門をもつのにはやはり15年以上かかりますから、そこまでは勤務医として技術を学びたいという先生もおられると思うんですよね。

とすると、自分のしたい医療ができる病院に勤務したいという気持ちの時期と、親のクリニックの継承を考える時期が重なって進路に非常に悩む、ということは起きる可能性があると思います。

この継承するタイミング、というのは非常に難しい問題だと思います。

じゃあ親が早めに引退して休院にしておいて、子供が継ぎたい時に継ぐといいんじゃないか、と思う方もおられるかもしれませんが、これは継承のメリットがほぼなくなってしまいますね。

継承のメリットは患者さんが引き継げて、初めから軌道に乗った状態でスタートできるということになるんですが、一旦休院になると患者さんは他の医院に流れますから、結局新規開業と同じになってしまいます。

あとは、その休院している間に別のクリニックが近くに開業してしまうということもよくありますね。

とするとその後の開業は非常に大変になります。

親子でのクリニック継承が難しい理由「親子で一緒に働くということ」

さらに親子継承の難しいポイントは、やはり親子が一緒に働くという難しさですね。

親がやってきた診療スタイルはすでに古い可能性がありますから、やはり若い先生とは自分の子供とはいえ相容れないと思うんですね。

すると患者さんは前院長の方に慣れていますから、診療スタイルで揉める、ということはありえますね。

そして親の方がまだまだ元気で自分の影響力を発揮したい、という状況だと当然ぶつかることもありますよね。

医師で70代までバリバリ診療をしている先生ってパワフルだったりしますから、そのパワーに子供が反発することもあると思います。

私の知人で親子で裁判沙汰になっている先生はこのケースですね。

親子でのクリニック継承が難しい理由「お金の問題」

あとはお金の問題もあります。

病院の代表を親がするにしても子供がするにしても、どちらかは給料を出される形になりますから、ここで揉めることもよく聞きます。

子供としては、自分の方がたくさん患者さんを診察して病院に貢献しているのにこれだけしかもらえない、という不満が出ることはよくあるでしょうし、逆に子供が院長で親が給料をもらう形にしても、親に対して出す給料は単純に今現在の売り上げの割合だけで出すわけにいかないかもしれませんから、過去の実績を加味する必要があるかもしれません、

どれくらいの給料に設計するのか、ここも難しい問題ですね。 他にもあるかと思いますが、このように親子でのクリニック継承って難しい問題を含んでいるんですね。

それでも大きい親子でのクリニック継承のメリット

ただ、やはり継承のメリットというのは非常に大きいと思います。

クリニックって先行者利益が強い業種ですから、そこの場所に昔からあるクリニックというのは地域の方から信頼されていて、当然新規開業に比べて相当有利です。

親子継承のクリニックを見ていると、先ほど述べたような問題があるとはいえ、もともと地盤がある場所に若いエネルギッシュな子供が継いで患者さんが激増する、というパターンがほとんどですね。

子供が継いで患者が減った、というクリニックは実はあまり聞いたことがありません。

なので、経営上のメリットというのはやはり大きいと思います。

借り入れも発生しませんしね。

これは私の個人的な感想なんですが、うまくいっているクリニックがどういう感じかというと、多くは親の側が息子に早々と権限を渡して手を引いている、という形が最もうまくいっていますよね。

いつまでも親が権力を持っていると揉めてしまう原因となりますから、少し親の方に後ろ髪を引かれるような気持ちがあっても、子供に権限を早めに引き継いで口出しをしない、というのがいいですね。

あとは逆に子供が非常におっとりしていて親が権力を強く持っているままだけど、子供は特にその状況にストレスを感じていないというパターンでもうまくいっているところもありますね。

親子共に我が強いタイプだと必ず揉めますからどちらかが引かないといけないんでしょうね。

以上、今回は親子でのクリニック継承のメリットデメリットをお話ししました。

ただ繰り返しますが、私は当事者ではないので、何か追加や修正することがあればぜひおっしゃっていただければと思います。

いかがだったでしょうか。

親子っていい面悪い面がありますし、大企業でも親子で揉めているニュースを見たりしますよね。

やはり決め手は親が子供を信頼して早く手放す、ということのような気がしますね。

この記事が先生のお役に立つことができれば幸いです。

※この記事はVoicyでの音声配信の内容をもとに、一部再編集してアップしています。

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記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

耳鼻咽喉科クリニックの理事長として日々の診療、理事長業務を行うかたわら、開業医・開業準備医師限定のオンラインサロン「ドクターズチャート」をよいこはこいよと2019年に設立。現在オンラインサロンは会員数3,400名超。Twitterフォロワー数20,000人、音声配信メディアVoicyパーソナリティ

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