医師のMMと申します。開業医/準備医師オンラインサロン「ドクターズチャート」の運営をしています。
今回はクリニックを継承開業する時に気をつけるべきこと、というテーマでお話ししたいと思います。
開業を考えた時に、以前に増して新規開業だけではなくて、後継を探しているクリニックを継ぐ形で開業する、ということを検討している先生も多いと思います。
ある調査では、後継のいないクリニックは9割くらいもある、というデータもありますし、クリニックの院長の年齢に関しては、半分以上が60歳以上というデータもあるようですね。
ですので、これからどんどんこの継承開業という市場は大きくなってくることは間違いないと思います。
第三者からのクリニック継承で気をつけたいこと
今回はいわゆる親子の継承ではなくて、他人のクリニックを継承するという第三者継承と言われるパターンの話にフォーカスしたいと思います。
今こういった形で開業を考えている先生は以前にも増して増えてきていることを見聞きするわけなんですが、確かにうまく継承がまとまれば新規開業より明らかに立ち上がりもいいですし、地域の患者さんに取ってもクリニックがなくならずに済んでハッピーと、すごくいい形の開業になると思います。
でも、この第三者継承において気をつけておかないといけないことっていくつかあるんですね。
例えばこういったことをグーグル検索したとしても、大体はM &Aをビジネスにしている会社のHPが出てくるだけで、医師目線のフラットな情報ってなかなか出てこないと思うんです。
で、知識なく継承の話が進んで、大きな損が生じるような契約に至ってしまう、ということは本当によく聞きますね。
私自身は継承開業ではないのですが、自分の開業前に継承物件を契約する直前まで至ったこともありますし、様々な継承の先生方のお話を聞く機会もあって、通常の開業医よりは情報を得ている方だと思いますから、今回はこの継承開業で契約する際に知っておくべきことを、医師目線で感じることをお話ししていきたいと思います。
今回はそれについてのポイントを、たくさんあるんですがその中で4つの大事なポイントを挙げてみたいと思います。
まず最初は簡単に継承開業のメリットデメリットをご説明して、そのあとで継承開業のポイントをお話ししていきたいと思います。
クリニック継承のメリット・デメリット
初めは調べれば出てくるような内容ではありますが、継承開業のメリット・デメリットをお話ししたいと思います。
まずメリットです。
一番大きなメリットは、患者さんを引き継ぐことができるので立ち上がりが良い、ということですね。
すでに今どれくらいの患者さんが来ているかが当然わかっていますから、それ以下になることは通常ありませんからすでに収支の計算が立てられる、というのは大きなメリットですね。
新規開業の怖いところは、どれくらい患者さんがくるのかが本当にわからなくて、1日10人にとどまるのか、100人来てくれるようになるのか本当にわかりません。
それがすでに読める、というのはかなり大きなメリットになりますね。
あとは機械や内装などがすでにありますから、初期投資を低く抑えることができる、ということですね。
借り入れをかなり圧縮できる可能性もあり、これも大きなメリットです。
大きく分けてメリットはこの2つになると思います。
そしてデメリットなんですが、せっかく機械や内装を引き継いでも古くなっていて、結局買い換えたり建て直さないといけない、という余分な費用負担が発生することがありますね。
これは継承前にどれくらいの古さになっているのかを十分チェックして引き継がないといけません。
あとは、スタッフの問題も大きいですね。
すでにいるスタッフが力になってくれることもあるでしょうが、むしろ新しい院長のやり方に合わなくてもめる、というパターンの方が私の周りでは多い気がします。
しかもすでにかなりの高額な給料になっているケースもよくあって、新しい院長としてはそれほど出すに値しないと思っても、給料を下げられずに固定費が高くなってしまう、ということもありますね。
この辺りはきちんと新しい院長が自分の方針を表明して、それに合う人のみを残すという形にせざるを得ないと思います。
他にもメリットデメリットはあると思いますが、今回はこれくらいにしておきまして、ここからが本題の、実際の医院継承を契約するときのポイントを4つ挙げていきたいと思います。
クリニック継承の契約で気をつけたいこと①「継承の金額」
まず1つめ、継承案件を斡旋する会社やコンサルタントには十分注意しないといけない、ということですね。
彼らは大体継承案件が成立すると1割程度の手数料を取ることが多いですね。
それをクリニック側、継承する医師側両方から取る、ということをしたりします。
例えば1億円の継承の費用がかかるとすると、1割の1000万円が手数料になりますね。
これを両手で取りますから、2000万円の儲けということになることもあります。
すなわちこの料金体系だと、当然ですが継承の金額が高ければ高いほど儲かるということになりますよね。
もしこれが1億5千万になるだけで3000万円の儲けになり、コンサルのフィーは1千万も上がりますね。
継承の際はクリニックの評価額というのを決めるわけですが、その金額が数千万円上げることなどは簡単なことなんですよね。
クリニック継承の契約で気をつけたいこと②「ブレーンをつける」
2つめのポイントは1つめに繋がるのですが、交渉や契約の際にこちら側もきちんとしたブレーンをつけて交渉する、ということが大事ですね。
例えば勤務医として十数年働いてきて、こういった数千万円の案件の売買をやり慣れている先生はほぼいないと思うんです。
ですので自分だけで挑む、というのはやはりかなり危険と考えないといけませんよね。
でどうするかなんですが具体的には、こういった継承案件を手がけてきている税理士先生に依頼するのがいいと思います。
税理士にもよるんですが、こういった継承の手伝いを無料で相談に乗ってくれる方も多いですね。
なぜ彼らが無料で相談に乗るかというと、これは当然開業後に税理士として顧問契約をしたいから、ということな訳です。
ということは、開業してからの長い付き合いをすることを考えると、医師に対して不誠実なことはなかなかしない、ということはあると思います。
そもそもそのクリニックが利益が出ないとと顧問料をもらうことができませんから、先ほどのコンサルタントと違って利害が一致している、といえますね。
ですのでこういった知識のある税理士先生とつながる、というのがいいですね。
もちろん税理士の方にも色々な方がありますから、こういったことに慣れていない方もあるとは思いますので、確認は必要ですね。
ですので、彼らとしては利益を最大化しようとすると継承金額を少しでもあげる、ということになります。
ただこれって私たち医師の側からするとまさに利益相反、という仕組みになっているのはご理解いただけると思います。
ですので、本当に正しく評価されているのか、十分知識を持って確認しないといけないと思います。
クリニック継承の契約で気をつけたいこと③「のれん代の相場」
3つめはのれん代の相場についてです。
のれん代というのは営業権と言ったりもしますが、これは形はないけれどもそのクリニックの持っている将来性や実力を加味した金額のことですね。無形固定資産と言ったりもします。
この金額は、一般的には売上3ヶ月分とか、年間の利益の1年分とか半分とか、さまざま言われていますね。
例えば月1千万円の売り上げのクリニックの売上3ヶ月分で3000万円、という具合です。
ただ正直、クリニック継承においてのれん代の相場はあってないようなものですね。
というのはそもそも全国でクリニックの第三者継承が成立すること自体がそれほど多いわけではないので市場が成熟していない、ということがあると思います。
相場という意味でいうと、例えば院長が急死して急いで後継を探しているような時には、こののれん代は無料として継承医師を探されるクリニックも時々ありますね。
こののれん代というのが継承で交渉が必要なポイントですから、ここをきちんとお互いが納得するところで折り合いをつける、ということが大事ですね。
その際もやはり先ほどの、税理士さんのような相談できる人がいる方が客観的に交渉できると思います。
クリニック継承の契約で気をつけたいこと④「継承のタイミング」
最後ですが継承のタイミングです。
クリニックが閉院してしばらく経過しているのなら、もはや継承のメリットはほぼない、ということですね。
継承の最大のメリットは初めに言ったように、患者さんを引き継ぐことができるということです。
継承してしばらくは前院長と新しい医師が一緒に働いて、患者さんを引き継いだのちに前院長が引退するのが理想です。
これが例えば前院長の急な入院によって閉院して例えば3ヶ月でも空いてしまうと、特に慢性疾患の患者さんはその間に別のクリニックに流れてしまっている可能性が高いですから、結局新規開業と同じような条件になってしまう、ということはよく起きることですね。
でも継承を成立させたい院長側やコンサルタントはそういったことをあまり加味せずに営業権を設定したりしてくる、ということもあります。
ですので、この辺りは十分注意していかないといけないことだと思います。
以上、今回は4つのポイントを挙げてみましたが、他にもたくさんありますね。
また機会があれば触れていきたいと思います。
いかがだったでしょうか。
継承開業は今後どんどん増えていくことは間違いないと思っています。
私の周りでもうまく継承した先生は非常に立ち上がりもよくて、すぐに拡大して近くに大きなクリニックを立てなおした先生もありますね。
今後のクリニック開業において、継承は重要な位置を占めることは間違いないと思いますが、十分な勉強は大事だと考えています。
※この記事はVoicyでの音声配信の内容をもとに、一部再編集してアップしています。
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