適正額は?クリニック家賃について考えておくべき6つのポイント

適正額は?クリニック家賃について考えておくべき6つのポイント

医師のMMと申します。開業医/準備医師オンラインサロン「ドクターズチャート」の運営をしています。

クリニック開業における家賃の重要性

今日は、クリニックを開業する際に考えないといけない、ビルにテナントとして入る時の家賃について、知っておくべきことをお話ししてみたいと思います。

クリニックの開業って、土地から手に入れて自分で建物を建てる戸建て開業と、ビルの店舗区画にテナントして入るテナント開業がありますが、今回はこのテナント開業のケースについてのお話ですね。

この戸建てか賃貸か、という話もよく話題になるんですが、今回はテナント開業についてのみのお話しになります。

さて、クリニックの家賃って、当たり前ですけど開業している間中ずっとかかる固定費ですよね。

その固定費の中でも比較的大きい固定費になりますよね。

今回はこの家賃について、私がポイントだと思うことを6つ、お話ししてみます。

家賃交渉の考え方とか、来年以降の、ビルの空室がどうなっていくのかの予想などもお話ししてみたいと思っています。

クリニックの家賃と患者数の関係

1つめ、ある程度患者数が増えるまでは経営に大きくのしかかってくるのがこの家賃なんですけど、軌道に乗ってくるとそれほど問題にならなくなる、ということがありますね。

具体的な話をすると、開業当初1月当たりの診療報酬が200万円、という時もあるかと思うんですけど、このうち例えば家賃が60万とすると、3割を占めることになって結構重荷ですよね。

でも患者さんが増えても家賃は基本的には増えませんから、診療報酬が1000万、ということになると6%程度を占めるだけになって、ここまでいくとこの60万が70万になっていてもそれほど問題にならない位かもしれません。

家賃は安いに越したことがないんですけど、患者さんがかなりくると見込める場所なら考慮の余地があるかもしれません。

とにかく家賃はずっとかかってくる出費ですから、何人の患者さんが来るとペイするのかをきちんと戦略的に考えて、無理な計画を立てることだけは避けないといけませんね。

具体的には同じ診療科目の先輩医師にどれくらいなのかを聞いてみるのがいいかもしれませんね。

クリニックの家賃を抑えすぎるリスク

2つめ、逆に家賃をけちりすぎて立地が悪いところに開業してしまうと広告費がかかって結局割高になる、ということもありますね。

これに関しては先日twitterでも触れたんですけど、例えば非常に立地がいい場所で家賃60万と、立地が悪いところで40万だとすると、もし広告費に月20万を費やすことになると結局同じですよね。

なので視認性が悪そうな家賃の安めのところに入ることになるなら、そのあたりは十分考えておいたほうがいいと思います。

定期借家契約の注意点

3つ目は定期借家契約、という契約形態に要注意、ということですね。

定期借家契約、お聞きになったことがあるでしょうか。不動産を扱っておられる方ならご存知だと思うんですけど、簡単にいうと、期限付きで借りる契約、ということですね。

大手の大型ビルはこの契約だったりすることがありますね。でも最近は中小のビルもこの契約を希望してくる、ということもあるようですね。

どんな契約かというと、例えば20年、という期限付きで借りて、20年後には元に戻して返さないといけない契約形態です。

もちろんその20年後もオーナーも店子側も同意するのなら延長することができるわけなんですけど、同意がなければ20年後に出ないといけない、ということになりますね。

なんでこんな形態があるのかといいますと、これはオーナー側を守る目的の契約ですね。

普通の賃貸契約って、結構借主保護の観点がありまして、一度入ったテナントは、正当な理由がないと立ち退かせることができないんですよね。

そこでこの契約にしておくと、決めた期限が来ると有無を言わさず立ち退いてもらえる、という契約ですね。

途中で解約すると残額の違約金がかかることもあります。

正直これは借りる医師側には全くメリットがない契約だと思います。

大体一度開業したら40歳で開業するとして、70までなら30年くらいはそこでやりたいわけですもんね。

なので、この契約だったとしてもここに入りたい、といういい場所かどうか、あとはこの契約を飲むのならその代わり家賃を相場より安くしてもらう、などの交渉はできる余地があると思います。

それでも強気に来られるのなら、別の場所を検討するのも一つの考えだと思いますね。

共益費の影響と確認の重要性

4つ目、ビルによっては共益費は馬鹿にできない、ということもあります。

大型ショッピングモールなんかは、家賃以外に共益費とか、何かの積立金とか、色々な上乗せで実際は家賃の1.5倍とか2倍、というようなことも聞きますね。

これは開業前に十分確認が必要だと思います。

先ほどは家賃が高くても宣伝費がかからない方がいいかも、というようはお話をしましたが、ショッピングモールに関しては、それだけの金額を出して果たして患者さんが来てくれるのか、正直微妙、ということもあると思います。

いい場所なら家賃は高い、ということはあると思うんですけど、逆に家賃が高いからいい場所、とは全く限らないですよね。

ここは十分注意するべきだとは思います。

クリニックならではの家賃交渉のポイント

5つ目、家賃交渉のポイントについてお話しします。

当たり前ですけど貸す側と借りる側がどちらが強気にいけるのか、ということで交渉の仕方が変わってきますよね。

オーナーが資産家で全く急いでいない、とかなら、貸す側の方が強気、ということはありますよね。

でも逆に駅前の医療モールなどで、なかなかテナントが入らずに数年空いたまま、というような状態って時々あると思うんですけど、そういうケースはかなり交渉の余地がありますよね。

さらに借りる医師側の事情ですね。

どうしてもここでやりたい、という場所なら強気な交渉はしにくいですけど、ここでなくても他でもいいや、と思っているのならかなり強気に出れるかもしれません。

でも前提として知っておいていいことは、ビルのオーナーにとってはクリニックが入ってくれる、というのはすごく嬉しいことなんですよね。

飲食店とかアパレルとかって、うまくいかなくって数年で撤退なんていうことは非常によくありますからね。というか、10年続くことの方が少ないですよね。

それに比べてクリニックって一度開業すると大体は数十年いてくれますから、オーナーにとってはかなりありがたい、ということになりますよね。

世間ではこういったことって当たり前かもしれませんけど、こういったことも医者は開業するまで知らない、ということは珍しくないですね。

私自身もそうでしたね。

なので、交渉次第ではかなり譲歩してくれることもあると思います。

その際の交渉のポイントなんですが、まずは近隣の相場を調べてそこまでは下げてもらう、ということは最低限必要ですね。

そして、クリニック開業に特徴的なことなんですけど、物件を決めてから実際開業するまで半年とか1年くらいかかる、ということは珍しくないですよね。

その間家賃を待ってもらう、フリーレントのための交渉などはもちろん大事ですし、さらに交渉次第では開業してからも1年間は家賃なしとか、半額とかに交渉次第で便宜してもらえることもあります。

何年かで段階を経て家賃を徐々に上げてもらうようにする、という条件で開業されている先生もありますね。

こういったいろいろな手段をこちら側も持って、相手の出方を見つつ、できる交渉をしていくことは重要だと思います。

今後の開業物件の見通しと戦略

6つめ、来年以降、いい立地の空き物件が出てくるのは確実なので、そこを狙って、家賃交渉していく、という準備を今からしておいてもいいと思います。

これはどういうことかというと、飲食店の補助金が今年いっぱいで終わりになることが濃厚なんですよね。

そもそも飲食店って10年続くのが1割以下、という世界なわけなんですが、今補助金バブルというべき状態になって、本当なら倒産とか閉店しているような飲食店がむしろ休業していることで補助金で潤っている、という所がたくさんあるんですよね。

そして補助金が終了したらその時点で閉店する所も多数出てくることは間違い無いですよね。

夜逃げも今でも増えているようですけど、さらに増えると思います。

きっと困るビルオーナーが多数出てくると思いますよね。

そこにクリニック開業を考えている医師から声をかけられると、おそらく非常に喜ばれると思いますよね。

家賃交渉も相当しやすくなると思います。

なので、自分が開業したい立地の物件事情を今から情報収集しておいて、不動産屋さんなどに声をかけておくといいと思います。

正直来年はチャンスだと私は感じていますね。

いかがだったでしょうか。

例えば銀座の寿司屋なんかは、家賃がめちゃめちゃ高くても、客の一人単価が高いので、十分その分を回収できる、というビジネスモデルですよね。

でもクリニックって診療報酬は全国一定、ということになりますから、この出せる家賃の上限は自ずと決まってくる、ということが言えると思います。

そしてそれでいうと、やはり家賃坪1.5万円くらいまでに抑えたいですよね。

ツボ2万円以上出すと、かなり戦略的にやらないと、資金繰りが大変になるイメージでしょうか。

もちろん最近は一等地だけど狭小開業、ミニマム開業、などで狭くてもうまくオペレーションして一等地でうまくされているクリニックもありますね。

その場所でどれくらいの患者数を想定しているのか、明確に考えて物件は探さないといけないと思います。

※この記事はVoicyでの音声配信の内容をもとに、一部再編集してアップしています。

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記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

耳鼻咽喉科クリニックの理事長として日々の診療、理事長業務を行うかたわら、開業医・開業準備医師限定のオンラインサロン「ドクターズチャート」をよいこはこいよと2019年に設立。現在オンラインサロンは会員数3,700名超。Twitterフォロワー数20,000人、音声配信メディアVoicyパーソナリティ

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