
医師のMMと申します。開業医/準備医師オンラインサロン「ドクターズチャート」の運営をしています。
医師にとって生命保険を考える意義
今日は、医師が考えるべき生命保険について、というお話をしてみたいと思います。
医師のようにある程度高収入の人だと、保険の営業マンに積極的に営業をかけて来られる経験がある先生も多いと思います。
そもそも入る必要があるのか、ないのか、入るとしてもどういう方針で入るべきなのか、なかなか正確な知識が得られない、と思っておられる先生も多いと思います。
私は今実は相当色々な保険に入ってきて、今もいくつかの保険に入っています。
法人保険もありますので、これに関してはまた別の話になりますので今日は置いておきたいのですが、今回は個人の生命保険について、私が感じていることをお話ししてみたいと思います。
まず、前提として、持病がない30代男性、という設定で考えてみたいと思います。
基本的な考え方として、当たり前なんですが自分が死んだら困る人がいるかどうか、という前提に立ち返るべきだと思います。
残される人のために入るのが生命保険な訳ですが、通常は配偶者と子供ということになりますね。
配偶者の生活費、という目的ももちろんありますが、子供の教育費、という目的も大きいと思います。
子供の教育費と生命保険の必要性
ここでまず子供の教育費という観点で考えてみます。
例えば、今35歳で子供が5歳と2歳、というような場合、下の子供が22歳になるのは20年後ですよね。
とすると自分は55歳、ということになります。
そこまでに死ぬ確率はどれくらいなのか、ということを考えてみますと、厚労省のデータをみますと、0.4% 、ということなんですね。1000人に4人、ということになります。
もちろんすでに持病などがある方の方が死亡率が高い、ということになりますから、健康な人の死亡率はこれよりもさらに相当下がると思います。
そこに自分が入るのか、ですよね。その確率に備える必要があるかどうか、よく考えないといけません。
次は配偶者の生活費、という観点で考えていきます。
独身医師と医療保険の是非
その前に独身ならもちろん必要ないと思いますが、医療保険は必要なのか、という議論もあると思います。
ただこれも数百万くらい貯金があれば、必要ないと思います。
ご存知の通り日本は公的医療保険が充実していますし、高額療養制度もありますよね。
なので基本的には医療保険は必要ないと思っています。
もちろん個室代とか、先進医療のための備えはどうか、ということになりますが、先進医療を保険で賄おうとすると、それだけで大体月3000円くらいの保険料になりますから、年間3万6000円、30年払うと100万以上ということになります。
このお金を払って、どれくらいの確率で先進医療を受ける可能性が出てくるのか、という問題がありますよね。
その頃にはもっと貯蓄もあるでしょうし、個室代くらいも賄えるくらいはあるでしょうから、健康ならやはり原則必要ないと思います。
さらに話がもっと逸れるんですが、私は法人ではがん保険には実は入っているんです。これは、10年くらいの支払いで死ぬまでの保険料を払ってしまう、というがん保険で、これは法人なら全額経費にできるんですね。
なので今ある程度経営的に順調な時に支払ってしまっておく、というのは節税の意味にはなるかと思っています。
話がそれました。生命保険に話を戻します。
配偶者の生活費と保険の選び方
さて次に配偶者がいる場合ですね。
生命保険に入る理由は当然残された家族が困らないようにする、ということが目的ですから、月にいくら生活費を置いておくのか、ということを軸に考えないといけません。
そして、ステージによって大きく分かれると思います。
例えば勤務医なのか、開業すぐなのか、開業してかなり順調に来ている時なのか。
まずはこの3つで分けてみます。
勤務医なら、多くの場合は厚生年金でしょうから、世帯主が死んだとしても遺族年金がおりますね
で、その金額で足りるのか、ということです。
マンションをすでにローンで購入していれば、通常団信、団体信用保険に入っているでしょうから、その時点で支払いはなくなります。
団信というのはご存知でしょうか。
住宅ローンに入る際に大体この団体信用保険、略して団信に入ることになるのですが、これは住宅ローンの金利に少し保険料が上乗せされていて、もし途中で死んでローンを払えなくなったら、その残りを補填してくれることになる保険のことですね。
すなわち死んだら借金はチャラ、ということになります。
なので、家賃や返済は発生しないですから、生活費だけでいいことになりますね。
その生活費にいくら用意するのか、ということです。
遺族年金でいくらくらい降りるのかは調べればわかりますが、子供がいて多くて年間190万、大体14、50万くらいでしょうから、それだけで足りないと思う分の生活費に対して生命保険をかける、ということになります。
これは残した家族がどれくらいの生活水準になるのか、ということを想定しないといけませんね。
そして掛け金を考えると、やはり今は掛け捨てがいいだろうと私は思います。
さらにネット証券が割安ですよね。
なのでもし配偶者が医師などで、十分生活費を得られる状況なら、遺族年金もありますし原則入らなくていいか、もしくは入るとしても少額で良いということになると思います。
勤務医と開業医における生命保険の考え方
さて次は開業した後についてですが、開業すぐと、ある程度軌道に乗ってからとでは考え方が変わってくると思います。
開業すぐは、当然多額の借金を抱えている状況でしょうから、やはりそれをカバーする保険は必要になってきますね。
ただ、先ほどと同じように団信に入っている場合は死亡時に帳消しになりますので、その部分をカバーする保険は必要ないですね。
このように当たり前ですが、死んだ後どれくらいの借金が残ってどれくらい生活費に必要なのか、それを十分計算して、さらに保険料が安い保険会社を選ばないといけませんね。
ただ実はここに関しては、開業時に融資を受ける際に生命保険加入が条件になっている場合があったりしますから、結局融資を受けるならそちらのために入らざるを得ない、ということもありますね。
いずれにせよ、このケースが生命保険が最も活躍する状態で必須と言える時期だと思います。
さて、最後は開業して軌道に乗ってある程度の貯蓄ができている場合ですが、これはもはや必要ない保険は解約していかないといけないと思います。
必要ない保険料をついずっと払いがちですが、毎年見直さないといけないですね。
子供の私立の医学部に行くなどの可能性があるのならやはり保険に入っている方が安心だと思いますが、子供の手が離れる時か、子供の学費分くらいは十分貯蓄がある、という場合はもはや保険は全く必要ない、という考えでいいと思います。
就労不能保険と公的保険のバランス
ちょっと別の話ですが、就労不能保険というものもありますね。
これも考慮の余地はないことはないと思います。
ただよく読むとかなり重度の障害などがないとおりない保険ですから、そうなってしまったら、もはや生活保護を受ける必要があるレベルかもしれません。
なのでこれも本当に必要かどうか、進められるままに入らずに、公的保険との兼ね合いをよく考えた方がいいですね。
絶対必要な保険と不要な保険の区別
最後に生命保険の話ではないのですが、とにかく絶対入っておくべき保険は、当たり前なんですが、自動車保険と、火災保険、これだけははいっておかないといけないと思います。
起きる確率と必要な額を照らし合わせると、これらに関しては入らないわけにいかないと思っています。
他の保険に関しては状況次第で本当に必要なものだけ入る、勧められるがままにしない、必要ないものは入らない、という意識が重要だと思います。
いかがだったでしょうか。
今回のお話しは私の個人的な考えなので、色々な考えがある方もあると思います。
毎年自分の資産と照らし合わせて必要性を見直すことは大事だと思いますね。
その見直しの際に、ここまでかけてきたからなーという思いは基本横に置いておいて、客観的に考えるのがいいと思います。
人はサンクコストになることを認めたくない生き物だと思いますが、ここは必要ないと思うなら思い切って損切りする、という勇気も重要だと思います。
※この記事はVoicyでの音声配信の内容をもとに、一部再編集してアップしています。
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記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)
耳鼻咽喉科クリニックの理事長として日々の診療、理事長業務を行うかたわら、開業医・開業準備医師限定のオンラインサロン「ドクターズチャート」をよいこはこいよと2019年に設立。現在オンラインサロンは会員数3,800名超。Twitterフォロワー数20,000人、音声配信メディアVoicyパーソナリティ。