レセプト業務は大変!現役クリニック開業医の体験談

レセプト業務は大変!現役クリニック開業医の体験談

医師のMMと申します。開業医/準備医師オンラインサロン「ドクターズチャート」の運営をしています。

レセプト業務とは?クリニック開業初期の課題

今日は当院のレセプト業務の実際について話してみたいと思います。

ちょっとマニアックなテーマかもしれませんけど、このレセプト業務って開業して一番初めにぶち当たる壁なんですよね。

当院も開業当初はこの業務で残業を繰り返してたんですけど、今は私もスタッフもこれによる残業は一切なくなってる状況になりました。

今日はそんな当院のレセプト業務についてどうやってきたのかの歴史を少しお話ししたいと思います。

今回は開業前の先生か開業して患者さんが増えてきて、レセプト業務が大変になってきてるくらいのステージの先生向けの話かもしれません。

レセプト業務の仕組みと重要性

先にちょっとレセプト、というのはいったい何なのかを簡単に説明しておきますと、日本語では診療報酬明細書というものですね。

日本は国民皆保険制度という、国民全員が医療を全額負担せずに一部のみの負担で受診できる制度を導入しています。

たとえば実際かかった診療費が1000円だったとすると、多くの人は3割負担ですから、実際病院に払うのは300円なんですね。

残りの700円はどうやって病院が得るのかというと、これを保険組合に請求するんです。

自営業の方は国民健康保険、いわゆる国保、サラリーマンの方は社会保険、いわゆる社保、ということになりますけど、そこに医療機関は残りの700円を請求するんですが、その時にこういう診療しましたよ、という証拠として見せるのがこのレセプト、ということになるんですね。

簡単にいうと、その患者さんにその月にやった診療のレシートですよね。

これを提出して、認められると2ヶ月後に700円が振り込まれる、ということになります。

そのレセプト業務が大変、というのは一体どういうことなんでしょうか。

これ、なんでもかんでもやった診療が認められて振り込まれるわけではないんですね。

この保険診療というのは、国が決めた診療の値段というのがあって、診療って定額なんですね。

原則いわゆる価格競争はない世界です。

その金額の自己負担分以外が請求できる、ということになっているわけなんですが、その財源の一部は国の医療費ですので、診療のためには何でもしていい、ということでなくて、認められたルールの中での診療のみ保険診療として認められる、ということになるんですね。

なのでこの病気にこの薬を使うのはおかしい、ということになればこれは請求しても支払いはされなくて、場合によってはクリニックが持ち出しになる、ということもありえます。

なのでこのルールにのっとった診療をしているのかをきちんと説明するために、このレセプトを提出する前に抜け漏れとかがないかチェックする、という作業が必要なんですね。

これが結構大変で、たとえば患者さんが月に1000人きたとしたら、この1000枚を確認していかないといけないんですね。

それを翌月の10日までに提出しないといけません。

この診療報酬算定のルールというのが毎年変わりますし、全ての病気と治療で細かくルールが決められていますから、

たとえばこの検査をしようと思ったらこの病名の疑いがないとダメとか、さらにこの検査をせずに先にこの検査をしてはダメとか、他には特に内科だと管理料という点数もあったりして、これもこういった条件の時のみ算定できる、みたいなことがまさに電話帳みたいな本があるんですけど、

そのルールにのっとって間違いがないかレセプトを毎月チェックして、翌月の10日までに提出する、ということをしないとダメなんですね。

なので月初めから10日までは毎月残業、みたいなクリニックもあると思います。

このレセプト業務は、病院では大体医事課という部署があって、そこの部署の方が全部やってくださっていたので勤務医の時は正直この大変さをほぼ知らずにいてるわけなですが、

開業すると当然そういった人もいないですから、自分でやらないといけないんですけど、そもそも何をどこにどのように提出したらいいのかから私たちは知らない状態で開業することになるんですよね。

開業してからこれを先輩に聞いたり電子カルテ会社に聞いたりして何とか勉強していく、ということになります。

このレセプトを翌月の10日までに送れないと、その月の売り上げの7割が振り込まれないことになりますもんね。

これはクリニックでは死活問題ですよね。

ということで、今日は当院が開業してこのレセプト業務をだれがやってきたか、そしていまどうなっているのかを話してみたいと思います。

開業当初のレセプト業務:私の体験談

まず、開業当初はこのレセプトに携わったことがあるのはオープニングスタッフの一人だけでした。

もちろん私もやったことがなかったですよね。

でもそのスタッフも違う診療科目のクリニックに勤めていた経験がある、というくらいでしたから、特にこれを専門にやってきてるわけでなくて、ほぼ皆一からスタート、みたいな状況でした。

そもそもこのレセプトを送らないとクリニックに売り上げが入らないよ、ということから説明しないといけない状況でしたよね。

なので開業当初は私がほぼ一人でこのレセプト業務をやってました。

初めにかなり頼ったのは近くにおられる先輩のクリニックと、電子カルテのサポートセンターですね。

同じ電子カルテを使っている先輩のクリニックに行きまして、どういう風に算定されているのかを見せてもらいました。

あとは地区の診療科の医師の会なんかもありましたから、そこからの情報も見てましたね。

そしてあと大事なのは病名がきちんと漏れずに書かれているか、ですよね。

この病名チェックは電子カルテにそういう機能がありますから、それを毎日チェックして、この病名が漏れていないかを確認します。

でこの作業を開業して数ヶ月は私一人でやってたんですね。

まあでも開業当初はそんなに患者さんも多くなかったですから、一人で診療後に残って十分こなせる感じでした。

でも今考えると本当に算定できる点数を算定していなかったこともすごく多かったですね。

スタッフを巻き込むレセプト業務の改善方法

しばらく私一人でやってたんですけど、このまま増えてくると自分だけではかなりしんどくなることが想像できましたので、スタッフを巻き込もうと思いました。

手当を出すのでだれかやってくれる人いないですかと募ってみたんですね。

その当時はパートスタッフが6人くらいでしたけど、そのうち2人が手を上げてくれました。

その2人に初めは私が一つずつ説明していきましたね。ただ私も決して詳しいわけではないですから、電子カルテ会社のサポートセンターに電話しまくってましたね。

この電子カルテのサポートというのは、最近は電話サポートがない会社も増えてきましたけど、当時はこの電話サポートに聞きまくってましたね。

開業して2、3年くらいは、毎月月初に私とスタッフ2人が診療後に残って、このレセプトのチェックをするようになりました。

診療終わりに9時か10時くらいまで毎月10日まで居残る、みたいな感じでやってましたね。

そしてスタッフもこのレセプトのことを理解してくれるようになってきて、自分たちでサポートセンターに連絡したりしてどんどん疑問を解決してくれてまして、最終的には私より全然知識量が増えてきましたよね。

でそうやってチェックを毎月していってたんですけど、今度はありがたいことに患者さんは順調に増えてきまして、診療そのもので時間がだいぶオーバーしてくるようになったんですね。

1時間くらい診療終わりが遅くなることが度々出てきました。

そうするとそのあとさらにレセプト業務、ということになるとそもそもレセプト枚数も増えてるわけですから、相当残業時間が長くなってきてしまいました。

スタッフの疲弊感もかなり出てきてしまったんですね。

そこでこのままではダメだということになりまして、できるだけ診療時間中にできることはする、という方向にシフトしていくことにしました。

もちろんそうすると診療時間中に診療のことだけで手一杯の状況だとさらにレセプト業務なんてできませんから、結局人を一人多めに採用することで診療時間中に時間が取れるようにしたんですね。

もちろん人件費は余分にかかってしまうんですけど、こうしたことのメリットは、人が一人多いことで少し余裕ができまして、このレセプト業務をやっているスタッフも時間中ずっとやってるわけではありませんから、電話対応したり、待合室の患者さんに声をかけたりとかいい効果も出てきたように思いますね。

レセプト業務を効率化するための工夫

原則レセプト業務も診療時間中に終わらせてしまう、という流れができるようになりまして、このレセプトチェックのために残業する、ということはほぼなくなりましたね。

現在はこのレセプトをオンライン国保や社保に送るんですが、その時だけで十分程度残業が発生している感じですね。

それだけになりました。

長い目で見ると、毎月残業が必ずある状況だとスタッフも疲弊して定着しない、ということになるでしょうから、スタッフが一人多くても結果的にはうまくいくように思いますね。

でもそのためにはある程度の患者数が来てくれて人件費が出せるようにならないとダメではありますね。

でも裏を返すと一人多く雇えないくらいの患者数のときはある程度院長が自分でやってしまえばいい、と言うことにもなるかもしれないですね。

ただできるだけ、院長は診療とか、集患に集中して、こういったレセプト業務は得意なスタッフに任せるほうが医院全体の効率としてはいいと思います。

地域性と情報収集の重要性

ちょっと話が変わりますけど、この、どの診療をしたらどの点数を算定していいのか、というのは我々医師は本当に知らないですよね。

しかも勤務医の時に携わってる診療と開業したら携わる診療は違ってたりしますから、開業してほぼ一から学ぶ必要が出てきます。

これに関しては、相当地域性がありますから、遠い地域の知り合いに聞いてもちょっと違ったりします。

なので基本的には同じ都道府県の先生に話を聞いて、どう算定しているのかを聞くのが結局一番重要ですね。

あとは保険医協会とか、最近はレセプトチェックの会社もいくつかありますから、そういったところからの情報を集めるのもいいですね。

各都道府県のレセプト単価の平均、というのが厚労省から公表されてますから、これが平均より逸脱して少ないのなら何か算定できるものをできてなくて知らないだけ、という可能性がありますから、これを先輩に聞くのがいいですよね。

院長が理解すべきレセプト業務のポイント

あとは、今は当院はかなりスタッフに任せてしまっている状況なんですけど、このまま院長が理解できなくなってくる、みたいな状況になってる医院もあると思うんですよね。でもそれもよくないですね。

任せるにしても、院長が把握した上で任せないと、知らないままずっと間違えたまま、ということも当院もありましたし、最近はコロナ禍で特別な診療報酬もたくさんありますから、院長が一旦は理解しておくべきだと思います。

これを理解できてない、というのは、ラーメン屋の店主が自分のメニューの値段を知らない、と言うのと同じですもんね。

まあでも偉そうに言ってますけど、正直最近のコロナの点数なんかは私よりスタッフの方が理解してることは増えてきてしまってますね。

レセプト業務がクリニック経営に与える影響

ということで、今日の話をまとめますと、患者が少ないうちは院長が自分でやってしまってもいいですけど、ある程度増えてきたらできるだけスタッフを巻き込んで、さらに可能なら一人多く雇うことで診療時間中にレセプト業務を仕上がるようにすると、スタッフの定着率が上がって

結果的に人件費も減る、ということにつながると思っています。

いかがだったでしょうか。

こういうレセプト業務なんていうのは医療事務の本を読んでみても特にわからないと言うか、実際の業務のことは学べないですよね。

ここに関してはいまだに近くの先生方から口コミにで教わる、みたいな部分が大きいですね。

今はネットで情報が溢れてきてますけど、ここはまだまだ旧態依然というか、リアルの知り合いからの情報が重要な部分ですね。

あとは、開業するまでこういった日本の保険診療の仕組みを学ぶ機会が全くないのも不思議ですね。

医は仁術という理念は悪くないと思いますけど、現実問題保険診療で日本の医療は成り立ってるわけですから、その仕組みくらいは学んでおくべきな気がしますよね。

記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

耳鼻咽喉科クリニックの理事長として日々の診療、理事長業務を行うかたわら、開業医・開業準備医師限定のオンラインサロン「ドクターズチャート」をよいこはこいよと2019年に設立。現在オンラインサロンは会員数3,700名超。Twitterフォロワー数20,000人、音声配信メディアVoicyパーソナリティ

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