
医師のMMと申します。開業医/準備医師オンラインサロン「ドクターズチャート」の運営をしています。
キャッシュレス決済 クリニックの現状
今日は、クリニックはキャッシュレス決済を導入するべきか、ということに関して私の考えを述べてみたいと思います。
ひょっとすると業種によってはキャッシュレスが当たり前で、クリニックはいまだに導入するべきかどうかを悩むなんて遅れてるなあと思われる人もあるかもしれませんけど、私が少しネットで調べてみた結果何ですが、いわゆる病院ではなくて全国のクリニックでキャッシュレス決済を導入しているのは、1割から多くて2割、というところのようですね。
東京都心部とか大都市なら導入率は少し高いかもしれませんけど、地方だとほぼどこも導入していない、という地域もあると思います。
クリニックとすると周りがどこも導入してないのに、あえて手数料が取られるキャッシュレスを入れるメリットはあるのか、と思われるクリニック院長がいても不思議ではないですよね。
今日はこのキャッシュレス決済を導入する必要は果たしてあるのか、あるとしたらどんなメリットがあるのか。逆にデメリットはないのか、ということについて、私の考えを述べてみたいと思います。
キャッシュレス決済導入のメリット
まず、一番問題になるのは手数料だと思うんですよね。
導入しなかったら払う必要のない費用ですから、これをあえて払うメリットがあるのか、ということですよね。
飲食店とかだったらよくカード払いしなかったら少し割引、みたいなことをしてるところもありますけど、それだけ手数料が飲食店にとっては負担、ということですよね。
でも実はこの手数料という点で、保険医療機関は相当有利なんです。
それをちょっと具体的に計算してみたいと思います。
(1) 手数料の負担感の軽減
まず初めに飲食店の場合を考えてみたいと思います。
年間売り上げ1億円の飲食店があるとします。
そして原価が4000万、人件費もろもろが3000万、利益が3000万円だったとしますよね。
そして半分の人がキャッシュレス決済を使うとすると、売り上げの半分の5000万円に手数料がかかることになりますね。
手数料が2.5%だとすると、手数料は125万円、ということになります。
そうすると利益は3000万円でしたから、手数料125万は利益の4%を占める、ということになります。
これって結構なインパクトですよね。
次に同じ売り上げのクリニックについて考えてみます。
売り上げ1億円として、飲食店より少し利益率は高いとして利益は4000万円としますよね。
手数料はどうなるのか、ということなんですけど、患者さんの半分がキャッシュレス決済を使ったとすると、5000万円分、ただこのうち実際患者さんが払うのは、たとえば現役世代なら3割負担なんですよね。
こどもなら無料だったり500円が上限だったりとかもあります。
なのでトータルすると売り上げの2割くらいが実際の患者負担金、と言われる割合になることもあると思います。
そうすると、5000万円の2割、1000万円分のカード払いに手数料がかかる、ということになります。
その手数料は25万ですね。
同じ売り上げの飲食店と比べると実に100万円安い、ということになりますね。
利益からの割合で見ると0.6%の手数料、ということになります。
ということで、手数料の負担が実は保険診療機関にとってはかなり小さい、ということがよくわかりますね。
実際は飲食店の方は高級店とかならほぼカード払いかもしれませんし、クリニックは実際は現金で支払う人がまだまだ多いですよね。
さらに手数料も飲食店より保険診療クリニックの方が安く設計されているサービスもあります。
1.5%くらいの手数料のサービスもありますね。
ということで、手数料という意味での負担というのはそれほど大きくないということはわかってもらえたかもしれませんけど、そうは言っても別に現金のみでも患者さんがきてくれてて、他も導入してないのに果たして費用が発生するものを導入する意味は他にあるのか、ということですよね。
(2) 受付業務の効率化
ここからは他のメリットを考えていきたいんですけど、まずは受付スタッフにおけるメリットですね。
一つは手間の問題です。
最近のキャッシュレスはほんと手間がかからなくなってきてて、うちも最近はpaypayを始めたんですけど、これ店側もすごく決済が簡単なんですよね。
受付の手間がほんと減りますね。
会計待ちが多い繁忙期とかだとすごく楽です。
もう一つのメリットは、後で現金が合わないというリスクが下がる、というメリットもあると思います。
診療終わりに会計が合わない、というのは時々あるんですよね。
そしてそういうのって大体患者さんが多くて診療が延長してスタッフが皆疲労困憊、という時に会計が合わない、ということが起きてさらに疲弊する、ということはどこのクリニックも経験していると思います。
それが、キャッシュレス決済が増えると、単純に現金のやり取りの頻度が減りますからこの会計が合わなくなるリスクは下がりますよね。
もちろん最近は自動釣銭機を使ったりすることもあるんですけど、それでも時々会計が合わないことは出てきます。
なので受付業務でのメリットはそれなりにあると感じています。
(3) 集患効果と患者満足度の向上
もう一つのメリットは、このキャッシュレス決済導入が集患につながるのか、という部分ですね。
これに関しては、都会ではもうキャッシュレスがだいぶ進んできてますから、キャッシュレス決済が使えるからあそこの医院に行こう、ということは出始めていると思います。
地方だったとしても、かなり急激にキャッシュレス決済が増えているのを実感してますね。特にこのコロナ禍で接触を嫌う人も増えてきたのか、この1、2年かなり急激にキャッシュレスを希望している人が増えてきてる印象が当院もありますね。
高齢者の方の使われる頻度も案外増えてきています。
実際スマホのみでできるキャッシュレス決済も増えてきましたから、ここまでいくとあそこはキャッシュレスを導入しているから行こう、という人がまさにこれから増えてくるフェーズかと思います。
実際そういう人もたまに来られるようになりました。
他が始める前に始めておく、というのはそのエリアの市場を取るためにも重要ですね。
キャッシュレス決済導入のデメリット
ということで、キャッシュレス決済のメリットについて話してきたんですけど、逆に手数料以外の他のデメリットという部分なんですが、これは設置するときにカウンター周りが混雑する、ということですね。
いろいろな種類のキャッシュレスを導入しようとしたときに、1つだけの端末と契約したらすべてまかなえる、ということはないんですよね。
飲食店とかドンキホーテみたいなところに行くと、受付にいくつか端末をかざしたりカードを入れたりする読み取り機が何台もあるのをみますよね。
それでなくてもクリニックの受付は狭いことが多いのに、色々端末を入れたりモニターを入れたりしないといけなかったりするんですよね。
ここはぜひ改善してほしい部分ですね。
今後のクリニックとキャッシュレス決済の展望
まあでもデメリットはこれくらいで、おそらく今後数年で日本にも遅まきながら他の国のようにキャッシュレスがやっと普及していくフェーズに来た、ということをやや郊外のクリニックの当院でも感じ始めている、というお話でした。
いかがだったでしょうか。
オンライン資格確認も始まってますし、電子処方箋も進みそうですから、キャッシュレスを含めたクリニックのいわゆるDX化、ということに手掛けていけないクリニックはどんどん淘汰されていく時代がすぐそこまで来てますね。
これを逆にチャンスにかえていきたいですね。

記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)
耳鼻咽喉科クリニックの理事長として日々の診療、理事長業務を行うかたわら、開業医・開業準備医師限定のオンラインサロン「ドクターズチャート」をよいこはこいよと2019年に設立。現在オンラインサロンは会員数3,700名超。Twitterフォロワー数20,000人、音声配信メディアVoicyパーソナリティ。