
このコラムでは2025年4月施行のかかりつけ医機能報告制度について解説していますのでご参考ください。
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かかりつけ医機能報告制度の要点
・診療科目問わずほぼ全ての医療機関が報告を行う必要がある(対象外は特定機能病院、歯科のみ)
・制度の施行は2025年4月からだが、実際の報告は同年11月に初回報告を行う見込み
・報告はG-MISにて行うこととなる見込み
・報告内容は1号機能と2号機能の2つに別れており、1号機能の条件を全て満たす医療機関は2号機能も報告する必要がある(具体的な報告内容は記事後半に記載)
・各医療機関から報告された内容は患者に対してかかりつけ医に関する情報を提供するとともに、地域ごとにかかりつけ医機能を確保するための協議の材料として活用される予定
引用元の厚生労働省資料も併せてご確認ください。
・令和6年10月18日かかりつけ医機能報告制度に係る第1回自治体向け説明会資料
・「令和7年1月31日かかりつけ医機能報告制度に係る第2回自治体向け説明会資料
かかりつけ医機能報告制度が開始される背景
かかりつけ医機能報告制度の話に入る前に、まず厚生労働省がなぜかかりつけ医制度を推進したいのか、その背景について確認しておきたいと思います。
かかりつけ医機能報告制度に関する自治体向けの説明会資料では、背景として今後の人口動態、医療需要、そして医療従事者のマンパワーに関するデータがまとめられています。

引用:「令和6年10月18日かかりつけ医機能報告制度に係る第1回自治体向け説明会」
日本では高齢化が進む中で、入院の需要は2040年に、外来の需要は2025年にピークを迎えると予測されています。
一方で、在宅医療の需要は2040年以降にピークを迎えると見込まれています。また、医療と介護の両方のニーズを持つ患者が増加しており、自宅などでの看取りとなる患者の数も増えているのが現状です。
このような状況の中、かかりつけ医制度が普及すれば、多様化する患者のニーズに添った医療を提供しやすくなります。また、患者が体調の変化を感じた際にまずはかかりつけ医へ相談することで、検査や投薬の重複を防ぐことができます。加えて、患者が不調を早期に相談することによって病気の早期発見や重症化の防止にもつながり、その結果として医療費の効率化・適正化も期待できます。
このような目的のもと、厚生労働省はかかりつけ医制度の推進を進めてきましたが、現状では十分に普及しているとは言えない状況です。
そこでこの状況を改善するために「医療機能情報提供制度の刷新」が打ち出されました。
制度刷新で重視されるポイントとしては、患者が適切にかかりつけ医を選べるよう情報提供の項目を見直し、より検索しやすい全国統一のシステムを構築することが掲げられています。
かかりつけ医機能報告制度とは?
かかりつけ医機能報告制度は、患者に対してかかりつけ医に関する情報を提供するとともに、地域ごとにかかりつけ医機能を確保するための協議の材料として活用される予定となっています。

引用:「令和6年10月18日かかりつけ医機能報告制度に係る第1回自治体向け説明会」
おおまかな流れとしては、まず対象となる医療機関が都道府県に必要事項を報告します。
次に、都道府県が医療機関ごとのかかりつけ医機能を公表するとともに、その内容を集約し、外来医療に関する協議体へ報告します。
最後に、協議体がかかりつけ医機能を確保するための具体的な方策を公表する、という仕組みになっています。
かかりつけ医機能報告制度の対象となる医療機関
報告を行わなければならない医療機関は「特定機能病院及び歯科医療機関を除く、病院・診療所」となっており、診療科目問わずほぼ全ての医療機関が対象となります。
かかりつけ医機能報告制度での報告内容
報告内容は1号機能と2号機能の2つに別れており、1号機能の条件を全て満たす医療機関は2号機能も報告する必要があります。
・1号機能について
継続的な医療を要する者に対する発生頻度が高い疾患に係る診療を行うとともに、継続的な医療を要する者に対する日常的な診療において、患者の生活背景を把握し、適切な診療及び保健指導を行い、自己の専門性を超えて診療や指導を行えない場合には、地域の医師、医療機関等と協力して解決策を提供する機能
・1号機能の報告事項
⚫ 「具体的な機能」を有すること及び「報告事項」について院内掲示していること
⚫ かかりつけ医機能に関する研修の修了者の有無、総合診療専門医の有無
⚫ 17の診療領域※1ごとの一次診療の対応可能の有無、いずれかの診療領域について一次診療を行うことができること
⚫ 一次診療を行うことができる疾患
⚫ 医療に関する患者からの相談に応じることができること
※1 皮膚・形成外科領域、神経・脳血管領域、精神科・神経科領域、眼領域、耳鼻咽喉領域、呼吸器領域、消化器系領域、肝・胆道・膵臓領域、循環器系領域、腎・泌尿器系領域、産科領域、婦人科領域、乳腺領域、内分泌・代謝・栄養領域、血液・免疫系領域、筋・骨格系及び外傷領域、小児領域
※ 上記の1号機能に係る報告事項がいずれも可の場合は、「1号機能を有する医療機関」として2号機能の報告を行う。
※ かかりつけ医機能に関する研修及び一次診療・患者相談対応に関する報告事項については、改正医療法施行後5年を目途として、研修充実の状況や制度の施行状況等を踏まえて、改めて検討する。

引用:「令和6年10月18日かかりつけ医機能報告制度に係る第1回自治体向け説明会」
・2号機能について
(1)通常の診療時間外の診療
① 自院又は連携による通常の診療時間外の診療体制の確保状況(在宅当番医制・休日 夜間急患センター等に参加、自院の連絡先を渡して随時対応、自院での一定の対応に加えて他医療機関と連携して随時対応等)、連携して確保する場合は連携医療機関の名称
② 自院における時間外対応加算1~4の届出状況、時間外加算、深夜加算、休日加算の算定状況(2)入退院時の支援
① 自院又は連携による後方支援病床の確保状況、連携して確保する場合は連携医療機関の名称
② 自院における入院時の情報共有の診療報酬項目の算定状況
③ 自院における地域の退院ルールや地域連携クリティカルパスへの参加状況
④ 自院における退院時の情報共有・共同指導の診療報酬項目の算定状況
⑤ 特定機能病院・地域医療支援病院・紹介受診重点医療機関から紹介状により紹介を受けた外来患者数(3)在宅医療の提供
① 自院又は連携による在宅医療を提供する体制の確保状況(自院で日中のみ、自院で24時間対応、自院での一定の対応に加えて連携して24時間対応等)、連携して確保する場合は連携医療機関の名称
② 自院における訪問診療・往診・訪問看護の診療報酬項目の算定状況
③ 自院における訪問看護指示料の算定状況
④ 自院における在宅看取りの実施状況(4)介護サービス等と連携した医療提供
① 介護サービス等の事業者と連携して医療を提供する体制の確保状況(主治医意見書の作成、地域ケア会議・サービス担当者会議等への参加、介護支援専門員や相談支援専門員と相談機会設定等)
② 介護支援専門員や相談支援専門員への情報共有・指導の診療報酬項目の算定状況
③ 介護保険施設等における医療の提供状況(協力医療機関となっている施設の名称)
④ 地域の医療介護情報共有システムの参加・活用状況
⑤ ACPの実施状況
かかりつけ医機能報告制度のスケジュール
かかりつけ医機能報告は、制度の施行後、毎年報告することが義務付けられています。
この制度自体は2025年4月から開始されますが、クリニックによる初回の報告は2025年11月頃になる見込みです。
また、年間でのサイクルのイメージも資料にも記載されています。

引用:「令和6年10月18日かかりつけ医機能報告制度に係る第1回自治体向け説明会」
・年間サイクルのイメージ
11月頃~ 医療機関への定期報告依頼
1月~3月 医療機関による報告及び都道府県による体制の有無の確認、未提出医療機関への催促
4月 報告内容や体制の有無の確認結果の公表
4~6月頃 報告内容の集計・分析等
7月頃~ 協議の場の開催
12月頃~ 協議の場の結果の公表
また報告は原則としてG-MIS(「医療機関等情報支援システム」)で行うことになりそうです。

引用:「令和7年1月31日かかりつけ医機能報告制度に係る第2回自治体向け説明会」
以上、かかりつけ医機能報告制度について解説しました。
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