クリニックの電子カルテ 比較のポイント

クリニックの電子カルテ 比較のポイント

はじめに

開業医にとって、電子カルテは診療の中心となる重要なシステムです。しかし、電子カルテにはさまざまな種類や機能があり、どれを選べばよいか迷うことも多いでしょう。

そこで、この記事では、開業医が電子カルテを選ぶ際に知っておくべきポイントをご紹介します。

電子カルテとは、紙カルテで管理していた患者情報や診療記録を電子データ化したもので、パソコンやタブレットなどで入力・閲覧・管理することができるシステムです。

電子カルテを導入することで、以下のようなメリットが期待できます。

  • 診療効率や業務効率が向上する
  • 受付と医師などセクション間での連携がスムーズになる
  • 紙カルテの保管場所や費用が不要になる

一方で、電子カルテ導入には以下のようなデメリットもあります。

  • 導入費用や運用費用が高くなる場合がある
  • システムトラブルや通信障害によって使用できなくなる場合がある
  • サポート体制や連携システムが不十分な場合がある

これらのメリット・デメリットは、電子カルテの種類や機能によって異なります。開業医は自分の診療スタイルやニーズに合った電子カルテを選ぶ必要があります。

では、具体的にどのように選べばよいのでしょうか?次からは、電子カルテ選びのポイントを詳しく見ていきましょう。

オンプレミス型か?クラウド型か?

まず最初に決めるべきことは、電子カルテの種類です。電子カルテには大きく分けて、オンプレミス型とクラウド型の2種類があります。

オンプレミス型とは、自分のクリニックにサーバーを設置して、電子カルテシステムを運用するタイプです。クラウド型とは、インターネット上にあるサーバーに電子カルテシステムを利用するタイプです。

それぞれにメリット・デメリットがありますので、比較してみましょう。

オンプレミス型電子カルテのメリット・デメリット

オンプレミス型電子カルテのメリット・デメリットは以下の通りです。

オンプレミス型電子カルテのメリット

  • インターネットの通信障害の影響がない
    • インターネットが不安定になっても、自分のクリニック内で電子カルテシステムが動作するため、診療に支障が出ません。
  • ネット接続がないためセキュリティが強い
    • インターネットに接続されていないため、外部からの不正アクセスや情報漏洩のリスクが低くなります。
  • クラウド型に比べて画面構成等のカスタマイズ性が高い
    • カルテの画面構成などを比較的自由にカスタマイズできます。
  • 拠点展開している企業が多くサポートも充実している
    • オンプレミス型電子カルテは比較的大手企業中心に展開されているため、各都道府県に営業所を設置しており、サポートが充実している場合が多いです。

オンプレミス型電子カルテのデメリット

  • クラウド型に比べると金額が高い
    • サーバーの設置や保守管理にかかる費用が高くなる傾向にあります。バージョンアップの際に初期導入時と同額程度の費用がかかる点が大きなデメリットの一つです。
  • パッケージソフトであるため機能の改善に時間がかかる傾向がある
    • システムの開発や更新はパッケージソフトとして行われるため、市場やユーザーのニーズに素早く対応することが難しい場合があります。

クラウド型電子カルテのメリット・デメリット

クラウド型電子カルテのメリット・デメリットは以下の通りです。

クラウド型電子カルテのメリット

  • オンプレミス型に比べて導入費用が安価
    • サーバーの設置や保守管理が不要で、バージョンアップ費用もかかりません。初期費用も無料〜数十万円程度のメーカーが多いです。
  • バージョンアップの費用も不要
    • システムのバージョンアップに費用がかからない点は大きな魅力の一つです。
  • 院外でも閲覧可能なため訪問診療に適している
    • インターネットに接続できる環境ならどこからでも電子カルテシステムにアクセスできます。訪問診療など、院外での診療に便利です。
  • クラウドサービスであるため機能改善のスピードが速い傾向にある
    • 一般的にオンプレミス型のカルテに比べるとサービスの改善スピードが多いため、よりユーザーのニーズにマッチさせやすいシステム形態であると言えます。

クラウド型電子カルテのデメリット

  • 画面構成などのカスタマイズ性が低い
    • カルテだけに限らずクラウドサービスはあらかじめ定められた画面構成などのインターフェースに合わせる必要が多いため、カスタマイズ性はオンプレ型カルテよりも低い傾向にあります。
  • 拠点展開をしていないことが多くサポート面に課題がある場合も
    • クラウド型電子カルテは比較的新しいサービスであり、全国に拠点を持っている企業は少ないです。そのため、サポート体制や連携システムが不十分な場合もあります。
  • 通信障害などによって使用できなくなるリスクがある
    • インターネットに依存するため、通信障害やサーバー障害などによってシステムが使用できなくなる可能性があります。また、常時ネット接続するためセキュリティ対策も重要です。

カルテ機能におけるチェックポイント

次に、電子カルテの機能についてチェックするポイントをご紹介します。電子カルテは多くの機能を備えていますが、すべての機能が必要というわけではありません。自分のクリニックで必要とする機能は何かを明確にしておくことが大切です。

以下は、電子カルテ選びにおける主要な機能とそのチェックポイントです。

  • シェーマが書きやすいか?
    • シェーマとは、診察時に身体所見や診断結果を図示するための機能です。しかし、シェーマの種類や書き方は電子カルテによって異なります。自分が使いやすいと感じるシェーマが用意されているか、また自分で作成や編集ができるかどうかを確認しましょう。
  • 禁忌や投薬等の処方に関するチェック機能は充実しているか?
    • 処方に関するチェック機能とは、入力された処方内容に対して、相互作用、年齢・体重別の用量、禁忌の有無、過去の処方との重複投与などの観点でチェックを行い、警告やアドバイスを表示する機能です。この機能を使うことで、処方の安全性を高め、医療ミスを防ぐことができます。チェック項目や精度は電子カルテによって異なりますので、自分の診療科に合ったものを選びましょう。
  • レセプトチェック機能は充実しているか?
    • レセプトチェック機能とは、レセプト作成時に、診療報酬点数制度や医療保険制度に基づいて、診療内容や請求内容に不備や不適切な点がないかをチェックし、警告やアドバイスを表示する機能です。この機能を使うことで、レセプトの正確性を高め、レセプト返戻や算定漏れなどのリスクを低減することができます。チェック項目や精度は電子カルテによって異なりますので、自分の診療科に合ったものを選びましょう。
  • 操作速度は速いか?
    • 電子カルテシステムが入力や表示などの操作に対してどれだけ早く反応するかという指標です。操作速度が遅いと、診療効率が低下し、結果として患者さんを待たせたりすることになります。操作速度は電子カルテの種類や構成によって異なりますが、一般的にはクラウド型よりもオンプレミス型のほうが速いと言われています。しかし、クラウド型でもインターネット回線やサーバーの性能によっては十分な速度が出る場合もあります。実際にデモ版などで操作感を確かめることがおすすめです。
  • 院長先生自身が使いやすいと感じるインターフェイスか?
    • インターフェイスとは、画面デザインやレイアウト、文字サイズや色、ボタンやアイコンなどの画面デザインのようなイメージです。インターフェイスが使いやすいと感じるかどうかは、個人の好みや慣れによって異なります。自分が快適に診療できるインターフェイスを選ぶことが大切です。
  • クラウド型の場合は他のデバイスでも見やすい画面か?
    • クラウド型電子カルテの場合は、パソコンだけでなく、タブレットやスマートフォンなどの他のデバイスでもシステムにアクセスできます。しかし、画面サイズが異なるデバイスでも見やすい画面になっているかどうかは、電子カルテによって異なります。レスポンシブデザインの電子カルテは、デバイスに合わせて自動的に画面を調整してくれます。デバイスを変えてもストレスなく操作できる電子カルテを選びましょう。
  • どこまでカスタマイズができるか?
    • 電子カルテシステムを自分のクリニックに合わせて変更や追加することです。例えば、画面構成や入力項目、シェーマや処方内容などを自分で設定したりすることです。カスタマイズができると、自分の診療スタイルやニーズに応じて柔軟にシステムを使うことができます。しかし、カスタマイズには制限や費用がかかる場合もあります。自分がどこまでカスタマイズしたいかを明確にしておきましょう。

周辺システムとの連携は充実しているか?

次に、周辺システムとの連携についてのチェックポイントをご紹介します。電子カルテは診療における基幹システムですが、それだけでは十分ではありません。予約システムや問診システム、PACS(画像管理システム)など様々な機器やシステムと連携することで、診療効率や業務効率をさらに向上させることができます。以下は、電子カルテと周辺システムとの連携における主要なチェックポイントです。

・自分が連携を予定しているシステムとの連携実績はあるか?
当たり前ですが自分が連携したいシステムとの連携実績がある電子カルテを選ぶことがおすすめです。連携実績があれば、連携の方法や手順、費用などが明確になりますし、トラブルが発生した場合にも対応しやすくなります。そのため、おおまかにでいいので、どのようなシステムと連携する必要があるのか?を想定しておきましょう。

・自分の想定する連携の方法か?もチェックすべき
電子カルテと周辺システムとの連携には、さまざまな方法があります。連携の方法によって、操作性や利便性が変わってきます。自分が思ったような連携の方法ができるかどうかを確認しましょう。

サポート体制は充実しているか?

最後に重要なのがサポート体制です。電子カルテは一度導入すると毎日使い続けるシステム出るが故にトラブルや不具合が発生した場合には大きな影響が出ます。そのため、電子カルテを選ぶ際にはサポート体制が充実しているかどうかは非常に重要です。システムはいいけれどもサポートが不満なため電子カルテのメーカー変更をするというようなケースもありますので、しっかりとチェックしましょう。

以下は、電子カルテのサポート体制における主要なチェックポイントです。

  • サポートセンターの電話がつながりやすいか?
    • 電話でのサポートは、電子カルテのトラブルや不具合の解決に欠かせません。しかし、サポートセンターの電話がつながりにくい場合もあります。特に月末や月初めなどは混雑することが多いです。サポートセンターの電話がつながりやすいかどうかは、実際に電話をかけてみることで確認できます。また、サポートセンターの営業時間や休日も確認しましょう。
  • サポートセンターに繋がらない場合や緊急の場合には担当者に直接連絡可能か?
    • サポートセンターに繋がらない場合や緊急の場合には、担当者に直接連絡できると安心です。担当者とは、電子カルテの導入や運用に関する相談や対応を行ってくれる方(主には営業担当)です。担当者に直接連絡できるかどうかは、電子カルテによって異なります。また、担当者の連絡先や対応時間も確認しましょう。
  • 拠点(営業所)は近くにあるか?
    • 電子カルテのトラブルや不具合は、電話やメールだけでは解決できない場合もあります。そのような場合には、訪問対応が必要になります。訪問対応を早く・安く・確実に行うためには、拠点(営業所)が近くにあることが望ましいです。拠点(営業所)が遠い場合は、訪問対応に時間や費用がかかったり、対応できない場合もあります。
  • トラブルや不具合があった場合に訪問対応は可能か?
    • 電話やメールだけでは解決できないトラブルや不具合が発生した場合には、訪問対応が必要なケースもあります。しかし、訪問対応はすべての電子カルテで行っているわけではありません。また、訪問対応を行っていても、条件や費用が異なる場合もあります。訪問対応の可否や条件や費用を事前に確認しましょう。

まとめ

以上、開業医が電子カルテを選ぶ際に知っておくべきポイントをご紹介しました。電子カルテは診療における重要なシステムですが、それゆえにしっかりと比較検討する必要があります。

上記のようなポイントを最低限把握した上で、ご自身の診療方針にあった電子カルテを選定してください。

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