医師のMMと申します。開業医/準備医師オンラインサロン「ドクターズチャート」の運営をしています。
今回は「医師が開業を考えるタイミング」というテーマでお伝えしたいと思います。
医師はいつクリニック開業を考える?
医師は医学部を出ると必ず研修医になります。そしてその後は勤務医として病院勤務することがほとんどで、開業は早い人で30代、40代から50代がボリュームゾーンといえます。
すなわち開業医は、勤務医という立場を数年から20年くらい病院勤務で経験を積んで開業を志すわけです。
普通に勤務医をしていて気づいたら開業していた、などと言うことはありえません。
どこかで自分の意思で開業を考え、それに向けて準備するから開業医となるわけです。
そもそも勤務医でも1000万程度の収入をもらっていることはめずらしくありませんから、開業とはそれを手放してリスクを取る、という決断をすることになります。
医師がクリニック開業を考える理由
まず開業の理由を、ざっくりとポジティブかネガティブか、という分け方をしてみます。
私の周りの医師のケースでは正直、ネガティブな理由5割、ポジティブな理由2割、どちらでもないパターン3割、といったところだと思います。
先ほど言ったようにそもそも給料という意味で言うと、それなりの生活ができる金額はもらえていることが多いですから、それを上回る理由がないと、失敗するリスクもあるクリニック開業に飛び込むことは中々しないと言えます。
実際、勤務病院の不満をずっとぼやきながら「おれは開業する!」と言い続けて10年、というような先生はよく見ます。
ですのである程度安定している状況を捨ててでも開業する、というためには相当の動機がないと飛び込めないといえると思います。
そう考えると、その動機としてどうしてもネガティブなものが着火剤になる、ということはある意味当然と言えると思います。
それではその理由を挙げてみましょう。
医師が開業を考える”ネガティブ”な理由
まずネガティブな理由では、自分の職場への環境の不満、やはりこれが一番大きいですね。
例えば勤務病院が忙しすぎる、当直が多い、などはメジャーな理由でしょう。
忙しい病院では、自分の時間など本当にないですから、自分の時間が欲しい!という欲求は私含め、多くの医師が抱く欲求だと思います。
他には、手術する体力が保てなくなった、上司からパワハラを受けている、医局人事から離れたい、なども大きな動機だと思います。
私自身もこの、今いる環境への不満というのが最も大きなきっかけとなりました。
他のケースでは、教授を目指していたが後輩が自分を飛び越えて教授になってしまい居心地が悪くなる、などもよくあるパターンです。
出世コースから外れるというのも開業の大きなきっかけになると思います。
やはり開業を決断する一番大きいモチベーションとなるのは、仕事上で自分が置かれている状況に対する不満、と言うことだと思います。
子供の学費が高くなってきた、お金が必要になった、などは時々ある動機だと思います。
その他としてはそれほど多くはないですが、医師である夫はそれほど開業志向はないが、奥さんが夫をせっついて開業させる、というパターンもよくありますね。
このパターンは私が知る限り、うまくいく・いかないは正直半々、といったところでしょうか。
医師が開業を考える”ポジティブ”な理由
次にポジティブな理由を挙げてみたいと思います。
「クリニック開業に成功して羽振りのいい生活をしている先輩を見て」というのはよくあります。
「自分もああなりたい!」というモデルケースを見るというのは成功の第一歩なのかもしれません。
また「したい医療を自由にやりたい」というのも理由になるでしょう。医療の種類によっては、開業した方がだれにも忖度せずに自由にできるということはあると思います。
他にも最近では、ベンチャー起業に興味があり、足がかりとして開業を経験したいという先生も増えてきている印象があります。
色々な理由がありますが、ポジティブな理由の方より実はネガティブの方が強い感じは否めません。
人が何かを決断するときは、ゼロをプラスにするよりマイナスをゼロにするという動機の方が強いのかもしれません。
医師が開業を考える”ネガティブ・ポジティブどちらでもない”理由
3つめは「ネガティブポジティブのどちらでもない理由」です。
これは何かと言うと、開業医の息子である医師が親が急死して急遽あとを継がないといけなくなったというケースです。
案外このパターンで開業をする先生は多い印象があります。
ただ、親から継承した先生方の話を伺うと継承ならではの悩みも非常に多いようです。
「親のクリニックを継ぐだけだから楽でいいよねー」などと言われることは多いようですが、そういう言葉を掛けられる度に非常に不快な気持ちになる先生も多いようです。
私のクリニックは継承ではなく新規開業だったのですが、そのような話を聞くと継承ならではの悩みや苦痛も多く、大変だなあと思うようになりました。
最終的には”腹を括って”開業に向き合えるか?
最後にこれはとても大事なことだと思うのですが、「開業を考えるきっかけがなんだったとしても、成功するかどうかには関係ない」ということなんです。
「開業する!」と決めた時点で「クリニックをどう成功させることができるのか?」「そもそもクリニックを継続させることができるのか?」「来てくれる患者さんのために尽くし続けることができるのか?」「開業に対して腹をくくれているか?」の方が大事だということです。
例えば、開業など全く考えていなかった先生が教授戦に負け、開業でもするかという形で開業し、結局うまくいかないというようなケースも時々聞きます。
これは結局クリニックを開業しておきながら本気でコミットできていなかったということなんでしょう。こうなってしまうと、本人もスタッフも、通い始めた地域の患者さんも不幸ですね。
理由がどうであれ「腹を括る」ということはクリニックを開業する上で非常に重要だと思っています。
いかがだったでしょうか。
今回は「医師が開業を考えるタイミング」についてまとめてみました。
この記事が先生のお役に立つことができれば幸いです。
※この記事はVoicyでの音声配信の内容をもとに、一部再編集してアップしています。Voicyではその他クリニック開業・経営に関する内容を中心にお送りしていますので、ご興味のある方は下記プロフィール欄よりご視聴ください。
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記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)
耳鼻咽喉科クリニックの理事長として日々の診療、理事長業務を行うかたわら、開業医・開業準備医師限定のオンラインサロン「ドクターズチャート」をよいこはこいよと2019年に設立。
現在オンラインサロンは会員数2600名超(2023年10月現在。)
Twitterフォロワー数18,000人、音声配信メディアVoicyパーソナリティ。