医師のMMと申します。開業医/準備医師オンラインサロン「ドクターズチャート」の運営をしています。
今回はある先生からご質問いただいた内容をテーマにさせていただきたいと思います。
ご質問は「ある程度経験を積んでから年齢的に遅めに開業するということに対してはどう思うか?」ということでした。
医師が開業するのに適した年齢は?
年齢的に遅めの開業については別の機会でお伝えさせていただくことにして、まずは「開業に適した年齢はどれくらいなのか?」について考えていきたいと思います。
一般的に医師が開業を考える年齢というのは、大体40代、特に40代後半がボリュームゾーンだと思います。
その中でも耳鼻科や眼科、皮膚科などマイナー科目と言われる診療科は比較的開業は早めで、30代後半から40代前半開業の先生も多いですし、内科や外科などメジャーと言われる科目の先生は、50代開業、というパターンもよくあると思います。
では、何歳ぐらいでの開業が望ましいのでしょうか?
私自身は30代半ばで開業したのですが、同級生の中でも相当早い方だったと思います。100人いる中で、1、2番目の早さだったんではないでしょうか?
そして自分自身のことや、周りの色々な年齢で開業されている先生方を見て色々感じてきたことがあります。私が後輩の医師に、いつ開業したらいいのですか?と質問された時にいつも答えているのはこうです。
「将来絶対に開業すると確実に決めているのなら一日でも早い開業がいいよ。でも正直迷っているという状況なら、まだしばらく待った方がいいかもね。」と答えています。
開業すると心に決めているなら早く開業した方がいい理由
どういうことか説明します。
まず前半の「絶対に開業すると確実に決めているなら早い方がいい」という点ですが、これには2つ理由があります。
まずは開業資金のことです。
クリニックを新規開業するには5000万から1億円程度の借金を抱えて始めることになるわけです。当たり前のことですが医師の年齢が若い方が銀行も貸してくれやすいです。そして万が一、クリニック経営がうまくいかず借金を返せないということになったとしても、年齢が若い方がまだまだやり直しがきくということがあります。
もう一つの理由として、日本の医療の将来性や開業医の将来性がどうなっていくのか?という点を考える必要があると思います。
皆さんは、「医療の2025年問題」というものをご存知でしょうか?
これは、今病院やクリニックに通院するボリュームゾーンである団塊の世代の方々が高齢になって、外来受診できなくなるのが2025年くらいという国の予想です。
このときに外来受診数が激減する一方、病院入院患者や在宅利用者は増える、ということが起きると思われているようです。
要するにこの2025年くらいから、一般的なクリニックの外来患者数は減っていくだろうということなんですね。
実際これは私の印象レベルなのですが、今の高齢者の方は非常に元気なのでこの外来患者数激減の時期は数年ずれるということはありそうです。
さらに加えると、日本の医療費が年々増加しているのはよく知られているところだと思いますが、世界一の高齢化先進国である日本の医療費がこれから減っていくとは到底思えません。
となると財政がどんどん厳しくなっている日本において、予算のとても大きい保険診療が今後締め付けられていくことも高い可能性で起こりえます。
その結果、現在の医院の診療報酬体系にメスが入ることは個人的にはほぼ確実だと思います。
さらに、すでに地域によってはクリニック市場は飽和してきていますから、クリニック同士の競争は今後激化していくことが予想できます。
すなわち今後の社会情勢として、「開業医に逆風は吹くことがあっても順風が吹くことはない」といえると思います。
ですので、「それでもまだ他の業界より成功確率が高い」といえるうちに開業してしまうことは戦略として有効なのだろうと思います。
反対に若くして開業するデメリットはないのかということなんですが、クリニックは必ずしもベテラン医師だから流行るというものでもなく、私の周りで流行っている先生は意外にも若い先生が多いです
ですのでここはデメリットにならないと考えています。
開業を迷っているなら待った方がいい理由
次にもう一つの「ただ迷っているなら待った方がいい。」について説明します。
開業して成功するのか失敗するのかは正直やってみないとわかりません。
残念ながら思っていたように患者さんが来ないなどうまく行かなかった時、迷っている中での開業だと「やっぱりやめとけばよかった・・・」と後悔することになると思います。
大きな失敗でなくても、例えば人事のことで苦労するような時に「開業しなかったらこんな苦労なかったのにな」と思ってしまうことになると思うのです。
少し例を挙げると、たとえば「脱サラしてラーメン屋を開業する」という人がいて、迷いながら開業する人がいるでしょうか?
おそらく不退転の決意を持って会社をやめて、一旗上げるべくラーメン屋を開業することとなると思います。
なのになぜかクリニック開業に関しては、迷った状態のまま、今いる環境から出たいという理由だけで開業する医師も一定いらっしゃるというのが事実だと思います。
私は「開業だけがいい」とすすめているわけではありません。
「勤務医でないとできないこと」や「定額の給料をもらう安心感」というものもありますから、迷いがあるということは「勤務医としてやり残していることがある」ということなのかもしれません。
他にも最近は医師でありながら別の副業で結果を出している人も増えてきていますから、そういう道も考えておいていいと思います。
将来の社会情勢はわかりませんから「迷っているなら急がない」ということもれっきとした戦略といえると思います。
以上、開業に適する年齢について、「すると決めているなら早いに越したことがない、でも迷っているなら急がなくていい」という私の意見を述べてみました。
この記事が先生のお役に立つことができれば幸いです。
※この記事はVoicyでの音声配信の内容をもとに、一部再編集してアップしています。
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記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)
耳鼻咽喉科クリニックの理事長として日々の診療、理事長業務を行うかたわら、開業医・開業準備医師限定のオンラインサロン「ドクターズチャート」をよいこはこいよと2019年に設立。
現在オンラインサロンは会員数2600名超(2023年10月現在。)
Twitterフォロワー数18,000人、音声配信メディアVoicyパーソナリティ。