コロナ騒動後の医院開業について考える(前編)

コロナ騒動後の医院開業について考える(前編)

このブログは開業についてのポイントなどをテーマとしてるわけであるが、今までのような開業話が憚られる未曾有の事態が起き、何の記事の更新をするべきか悩んでいた。

先日、twitterでのzoomオフ会の時に、「もし今私が勤務医で、開業を考えているのなら、どうするのか」という質問を受けた。

その際、「コロナがなければ変わらず1、2年以内に開業したいと思っているが、コロナによって少し先が読めない今、やはり少し様子見か」と答えた。

その後、今後の開業につき考えていたのだが、少し様子見はするが、やはり私なら結局は開業を考えるだろうと思った。

そこで今回は、コロナ問題に伴ってどのような開業戦略を立てていくべきか、考えていきたい。


さて現在、そのコロナにより、他業種と同様当院を含め開業医は軒並み多大な影響を受けている。

そしてその先輩開業医の状況を見聞きすることにより、開業を考えている医師たちは、将来の開業に対しての思いに影響を与えられていることは間違いないだろう。

そして今までと同じ戦略では危険を感じる医師も多いと思う。

開業そのものを躊躇している医師も多いかもしれないし、まずは様子を見たいと思っている医師も数多くおられると予想する。


しかしそれでもまだ、飲食店など、他の業種の開業より安全な部類なのではと私は思う。

そもそも今回のコロナ問題では、勤務医にも大きな影響が出てきており、外勤のバイト先がなくなる、手術がなくなり病院経営を圧迫している、など今まで誰しも経験したことのない事態が訪れている。

勤務医を続けることも安泰とはいえない、そう思う医師も出だしているようだ。

そして一方で、やはり開業して自分の城を持ちたい、という思いがある医師にとってその夢は捨てがたいこともよく理解できる所である。

また、何をするにせよ、人と違う結果を出すためには人と違うことをしなければならないわけで、皆が開業を躊躇する今後、逆に狙い目であるともいえるだろう。

そこで今回は、現時点で私が思う、コロナ中、コロナ後の開業戦略を考えてみたい。

前提として、医療のニーズはなくならない

医院といえどもボランティアではなく、利益が上がらないと継続できないという観点からは、もちろんビジネスの範疇に入れていいだろう。


ここで基本的なことだが大事なことなので、ビジネスとは何か、を整理しておく。

ビジネスがどのように成り立つかというと、

1 需要があり、

2 それに対し供給できる商品があり、それを供給する手段もある。

3 そして、その商品に対し消費者が十分な対価を払う価値を見出している。

といったところだろう。


例を挙げる。

昔「写ルンです」という、使い捨てカメラがあった。

当時は一世を風靡したことはよくご存知のことだろう。

しかし、これもご存知の通り、デジタルカメラの隆盛により、フィルムの現像が必要なこういったカメラは、世界からほぼ姿を消した。

何の事業をするにせよ、ニーズがなくなっていく分野では、いくらそこで悪あがきをしても無駄である。


またさらに、他の物と代替可能な分野もこれからはしばらく相当厳しいだろう。

例えば高級アパレル産業などは、ファストファッションで十分代替可能であり、今のような全世界が生死を身近に感じる危機においては、その存在の意義を見いだすことは非常に難しい。

こういったブランドがマスクを販売し始めているが、これはそういう意味では当然の方略だろう。

すなわち需要があっても、それに対して適切な対価を払う価値がないと消費者が感じる今の状況では、ビジネスは成立しない


さて医療はどうだろう。

この未曾有の事態でさえ、病気がなくなることはない。

さらに、特に日本では言うまでもなく高齢化社会であり、医療を必要とする人口はまだまだ増えていく。

すなわち前提として、ニーズがなくなることはない業種であることは間違いない。

もちろん現在のような不測の事態では、外来患者が落ち込むのは当然なのであるが、どれだけ不況になっても「病気を治して欲しい」というニーズがなくなることはありえない。

なので、今患者が減って今までにないピンチを迎えているクリニック、病院も、頭を使ってそのニーズとマッチする手段さえ見つけることができれば、他の代替可能な物を扱っている業種より明らかに強く、有利であることは間違いない。

そして医療以上に今後ニーズが増えるだろう業界はそれほどないだろう。

そう考えると、医療従事者は、この今まで経験したことのない逆風下においてでも、他業界に転職するなどは考えず、この医療という業界の中でどう振る舞うのが正解か、を追求するべきだと私は思う。

そして、その医療という特殊な技術が必要な商品を扱う医師である、というアドバンテージは非常に大きく、これを生かさないというのはもったいない。


しかし一方で、気をつけておくべきことは、日本は国民皆保険であり、それが故に今までは受診する必要がない、自然治癒する疾患を持つ患者も受診していた傾向があった。

それが今回のコロナウイルスによって、自然治癒する疾患の患者の受診は今後抑制される可能性はある。

すなわちそのニーズは減る、ということだ。

これは適正な医療提供という意味では正しいことだと思うが、そこをターゲットにしていると今後厳しい可能性はあると思う。

自院がどういった疾患の患者によって成り立っていたのかを見直す必要はあり、医療のなかで、まだニーズが残る部分はどこか、を考えていかなければいけない。

今後のコロナの影響の動向(完全に独断)

このコロナ騒動がいつまで続くのか、によってどのようにこれからの戦略を考えていくのかが変わる。

もちろん誰も読めないことではあるが、私見では、日本に関しては5、6月には少し上向きに、夏には少し目処がついてきているのではと思っている。

他国の悲惨な様子を経験している海外在住の日本人の方々が日本のゆるい空気を不安視するような論説を見聞きするが、日本の方が明らかに早くコロナウイルスが上陸していたわけであり、さらに昨年から既に上陸している可能性も高かったと私は考えており、今後の変化を海外諸国と同列に考えることの方が違和感がある。

もちろん皆が自粛せずに、医療崩壊を起こすことは避けないといけない。

しかし結果的には、意図してか、せずかはわからないが、今の日本の政策は、現時点では機能していると思う。

そしてこのまま変わらず夏くらいになれば、色々なデータも集積し、少なくとも欧米と違って日本は目処が立っているのでは、と思う。

これに関しての考察の根拠は議論の余地のある所だと思うが、今回はそれがテーマではないので詳しくは触れない。

しかしある程度の見込みを持って動かないと先に進めないので、上のような前提で考えていきたいと思う。

テナントが余る

さて、ここからは具体的に考えていきたい。

まず、駅前の一等地などのテナントが多数空くだろう。

しかも今回の騒動で、飲食店や商店を開業することを躊躇する人も増え、中々テナントは埋まらない。

そうすると、一等地を格安で賃貸することができる可能性が高い。

医院の固定費として家賃は大きく占める部分の一つなので、これを抑えることができることは非常にありがたい。

ネット隆盛の時代とはいえ、リアルの立地がいいことは、医院経営には最も有利に働くことは間違いない。

空きテナントが増えてくるだろう5月、6月くらいから不動産情報などを見ておくことで今後の情勢がわかるだろう。

閉院件数の増加

このままコロナ騒動が長引き、オンライン診療などの技術導入が必須となってくると、特に高齢医院は閉院していくことが予想される。

昔レセプト提出のオンライン化が進んだ際も、一定の高齢医師医院は閉院した。

そもそも今回の場合、高齢医師自身がコロナウイルスに感染するリスクを感じているパターンもあり、このウイルスの特徴から考えると、これを機会に引退を考えるには十分な情勢である。

今まで多くの患者を診ていたような医院も閉院することもあり、そのエリアの患者が困る、そういうことはこれから多発するだろう。

こういった動きが出るのは夏くらいだと思う。

その時に、先輩開業医やコンサルタントなどから情報を集めておくことは非常に有用だと思う。

継承案件の増加

上の理由と被るところだが、継承案件は増えるだろう。

しかも継承は初期投資を大きく抑えることができる可能性があり、今後の情勢がわからない今、考慮に入れるべき形態だと思う。

さらに今までは継承医院、継承医師共にニーズのマッチングが難しく、一部の医師やコンサルタントの中のみの閉ざされた情報だけだったのが、今後はこういった情報サービスも増えていく可能性が高く、継承案件も流動性が上がってくると思う。

もちろん継承ならではのメリット、デメリットはあるのでその理解は重要だが、新規開業より相当低リスクで始められることは間違いないだろう。

こちらは夏から秋頃より情報が増えていくのではと思う。

ここ対しての情報収集は、地域の勉強会などで普段話さない高齢医師たちと交流を持っていくのもいいかもしれない(今の時期は不可能だが。。)

初期投資をとにかく抑えるべき

今回のコロナ騒動は、開業医、開業準備医師にとって、まさに晴天の霹靂であった。

今までの開業の常識では、こういった事態は想定してきていなかった。

しかし今後はこういうことが起きても対処できるよう、軽装開業を念頭に入れるのが望ましいといえるだろう。

今まで開業には数千万から1億程度かけることが一般的とされていた。

しかし、その常識をまったく覆して考えていく発想が必要だろう。

例えば、通常よりかなり狭小な設計の医院とし、集患はネットで完全予約、スタッフも最小人数しか雇わない。

もちろん高額な医療機器などは当初から購入せず、まずは最低限の設備を安く仕入れて初期投資を抑え、近隣の病院と初めから連携を取り、検査はそちらでお願いする。

例えば美容院などは医院の10分の1程度の初期投資で開業したりするわけで、そういった所のノウハウや設備を流用できないかを考えていくべきかもしれない。

そして、以前より再三述べているが、借り入れはできる限り多く、返済期間はできるだけ長く設定すべきだ。

とりわけ運転資金を豊富に用意しておく必要があるだろう。

1年間患者がゼロでもやっていける、それくらいの運転資金は用意する必要があるかもしれない。

また、融資の状況に関しても、今後は以前よりは銀行の査定がシビアになる可能性もある。

それでも他の業種より安全だとは思われているはずであり、特に地方銀行や信用金庫などは融資しないと事業が成り立たないので、いい立地条件など、きちんとした事業計画があればまだまだ融資が通るだろうと思う。

ここに関しては今後の社会情勢を見ていくしかない。

在宅医療を手がける

以前のブログで、2025年には外来の需要が激減する時期があるとの記事を書いた。

私としては、この時期を早く体感することになったと感じている。

こうなった時に開業医が手がけることになるのは、やはり在宅医療である。

ここのニーズはしばらくは増えていくだろう。

今まで在宅医療と無縁だったマイナー科目でも同じである。

例えば歯科医院には、訪問歯科診療に非常に積極的な所が多い。

外来のみでは経営が成り立たないという歯科医院もよく聞く。

待っていても患者が来ないのなら、こちらから行く。

語弊を覚悟で言うと、他の業種でいえば、店舗販売で認知度が上がらなければ、営業をかける、ということと同じである。

歯科医院の経営に対する積極性は学ぶことが多い。

成功している歯科医院のノウハウを盗むことは非常に有用だと思う。

他の収入源を確保する

開業に際し、すべての収入源を自院からのみにするのではなく、当直バイト、外来バイトなどを確保し、最低限の生活ができる状況を持っておくのが良いかもしれない。

幸い医師はまだバイトによって副収入が確保できるので、このメリットを生かさない手はない。

開業後数年、患者が増えない時期にも収入源がある、ということの安心感は絶大である。

複数の収入源を確保しておく。今後これは勤務医だろうが開業医だろうが必要なスキルだろう。

もっと言えば医師に関わらず、全ての人が複数の収入源を持つことを考えておかないといけない時代に突入したと私は思っている。

長くなってきたので続きは次のブログでもう少し掘り下げていきたい。

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