クリニックの売上の仕組みを理解する

クリニックの売上の仕組みを理解する

クリニック開業は慈善事業ではない。利益を上げないとクリニックは存続できない。

自分のしたい医療をし、地域に貢献することを目的に開業したとしても、利益が上がらないと閉院することになる。

きちんと利益を上げ、クリニックを存続させ、必要な投資を継続的に行い、医療の質を落とさないようにしていかないといけない。

以前は丼勘定でも経営は成り立ったかも知れないが、これからのクリニック開業は一般的に事業に関わる財務につき知識を持っておかないとクリニックを成り立たせることができないだろう。


ここではクリニック経営を知る上で、知っておくべき非常に基本的な利益の考え方を述べていきたいと思う。

こういったことは、事業を起こす人なら誰でも知ることだが、医師は意外と知らずにきているため、確認していきたいと思う。

クリニックの売上の仕組みを理解する①クリニックの利益の方程式

1 クリニックの利益は、

当たり前のことだが、

売上 - 経費 = 利益

である。

すなわち利益を大きくするには、売上を上げるか、経費を下げるしかない。

その中でまず、今回は売上を上げる考え方に触れる(経費についてはまた別の機会に)。


売上は、

レセプト枚数(患者実人数) × レセプト単価

のみで決まる(保険診療のみに言及)。

そしてこれをさらに分解すると、

患者実人数 × 1回受診単価 × 通院回数

ということになる。

売上を上げるには、この3要素のいずれか、もしくはいくつかを上げる以外方法はありえない。

それぞれに触れていく。

クリニックの売上の仕組みを理解する②通院回数についての考え方

まず、通院回数について。

この要素を増やすことを考えるのは得策ではないと考えている。

昔の、医療費が無料で医師が強気の商売をしていた時代であれば、患者を毎日処置に通わせるというスタイルでも患者は来ただろう。

しかし今は少ない受診回数で早く治す、ということを第一に考えるべきである。

当院の例でも、開業当初は1.7回/月程度であった受診回数が、最近は1.4から1.5回/月に下がっている。しかしここはこのままでよいと考えている。

ただ、治療上必要な再診を指示しても、受診しない患者に対しては、電話連絡し受診を促すなどの対応はするべきだと思う。

また、その診療回数の減少による売上の低下は、「あそこは早く治してくれる」という口コミを広げ、患者数を増やすことで補う感覚が必要だと思う。

クリニックの売上の仕組みを理解する③最も重要なのはレセプト枚数

次に患者数(レセプト枚数)について。

これら3つの変数の中で、最も重要である。

保険診療は単価を大きく上げられない業態である以上、クリニックの繁栄は患者数に依存しているといっても過言ではない。

すなわち患者数を最大化することに注力すべきである。

ではこの患者数をどう増やすかについては、書くべきことが多くあり過ぎ、一言では議論しにくいので、また項を改めて触れていきたい。

クリニックの売上の仕組みを理解する④算定漏れを失くすことが受診単価向上に直結する

最後に一回受診単価について。

先程ここを大きく上げるのは難しいとは書いたが、その中でできるだけここを上げることは重要だ。

もちろん医療的に不必要な検査などはすべきではない。そういうことをすると最近は患者もよく調べているので悪評が流れたりしたら元も子もない。

しかし必要な検査をきちんとする、算定漏れなどがないかきちんと見直す、ということは非常に大事である。

ここで、具体的に単価を上げることがどれくらいの影響になるか、見てもらいたいと思う。

例えば、あるクリニックの年間レセプト枚数10000枚、1回単価5000円、平均診療回数/月は1.5回とする。

そのクリニックの年間の売上は、

10000 × 5000 × 1.5 = 7500万円

ということになる。この単価が例えば1人600円上がると(保険負担割合3割なら180円、1割なら60円患者負担up)、

10000 × 5600 × 1.5 = 8400万円

クリニックは業種として、それほど原価のかからない業態なので、この売上増加分がほぼ利益になる。

すなわち、患者負担が百数十円上がるだけで、利益、ひいては院長報酬が900万上がることになる。

(簡単に儲けられるように思うかも知れないが、これは一例であり、実際は年間通して単価をこれだけ上げるのは非常に大変である。さらに上がりすぎると厚生局から呼び出されるため、範囲の限界がある)

私自身の経験では、勤務医の時は、診療報酬の仕組みにつきそれほど真剣に考えたことはなかった。なので算定漏れなど多数あったと思う。

しかし開業医は社会保険報酬制度上で成り立っている。認められている処置や検査、管理料をきちんと算定し、数十円や数百円の算定をないがしろにすべきではない。

その数十円から得られるべき大きな利益が得られていない可能性を考えておかなければいけない。

そのために、医師のみで算定をするのではなく、チェックできるスタッフの教育も非常に重要だと思う。

もちろん、繰り返すが、不必要な検査や処置などで稼ぐような愚はしてはいけない。

そして患者に不必要な再診を促すべきではない。

少ない回数で早く治し、いい口コミを広げる、これに全力を尽くすべきだ。

クリニックの売上の仕組みを理解するのまとめ

まとめると、
売上を最大化するには、

○とにかく患者数を増やすことが一番大事

○数十円程度の細かい保険点数もきちんと漏れなく算定するシステムを作る

○診療回数はむしろ少ない回数で終わらせる。そして早く治るという評判を作る。

ということになるのだろう。

記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

耳鼻咽喉科クリニックの理事長として日々の診療、理事長業務を行うかたわら、開業医・開業準備医師限定のオンラインサロン「ドクターズチャート」をよいこはこいよと2019年に設立。
現在オンラインサロンは会員数1100名超(2022年2月現在。)
Twitterフォロワー数13,700人、音声配信メディアVoicyパーソナリティ

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