クリニックの経費について理解する

クリニックの経費について理解する

医師のMMと申します。開業医/準備医師オンラインサロン「ドクターズチャート」の運営をしています。

さて、今回はクリニック経営に際し、理解しておくとよい経費に触れてみたいと思う。

上の画像は、当院の開業初期の損益計算書だ。これについての解説は後ほど触れる。

今回は以下の流れで説明していきたい。

○ クリニックは固定費ビジネス

○ 開業当初は経費削減が重要

○ 損益分岐点の考え方。当院の例

○ ある程度軌道に乗れば経費削減より売上UPを

○ 人件費の考え方

クリニックの経費について理解する①開業当初は売上を上げることに集中する

前回のブログで利益を上げるには、売上を上げるか、経費を減らすかしかない、と述べた。

しかしクリニック経営においては、利益upを考える際、売上を上げることによる効果に比べ、経費を下げることによる効果は限定的であると考えられる。

クリニック経営では、ある程度軌道に乗れば小さな経費を減らすことに労力を使うくらいなら、売上を上げる方法を考えた方がよいと感じている。

その理由は、クリニック経営は固定費ビジネスであることに起因する。

変動費ビジネスと、固定費ビジネスの違いはお分かりだろうか。

簡単にいうと、売上に合わせて経費が大きくなっていくビジネスを変動費ビジネス、売上が上がっても経費が増えにくいものを固定費ビジネスという。

原価が大きいビジネスは典型的な変動費ビジネスだ。

書店など小売店はその典型だ。飲食店も、小売店ほどではないが、必ず原価が発生するため、変動費ビジネスとだ。

それに対し、例えばコンサルティング業、IT企業、弁護士などの士業は、売上が増えてもそれほど経費が増えないので、固定費ビジネスといえる。


そしてここにクリニックも入る。

固定費ビジネスの特徴は、ある程度の売上になるまでは赤字が続くが、それを超えると利益が出やすい業態といえる。

そして売上がその固定費を大きく上回ると、固定費の少しの増減は問題にならなくなる。

しかし開業当初は固定費を超えないと黒字にならない、すなわち院長の給料が出せないということになるため、この固定費をできるだけ下げることが重要となる。

クリニックの経費について理解する②損益分岐点の考え方

さてここで、損益分岐点の考え方は理解しておくべきだと思っている。

損益分岐点は上記の図で表される。

そしてまずは損益分岐点を超える売上を目指さないといけない。

損益分岐点を算式で表すと下のようになる。

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ ( 1 – 変動費 ÷ 売上高)


ここで、冒頭に出した当院の過去の例からどの程度の売上が必要か、患者数が必要かを検討してみたい。(ざっくりとした計算をしているので、細かいことは見逃してもらいたい。致命的な間違いをしている場合、ご指摘いただければと思う)

まず、変動費(単位は万円)。

原価350

職員給与 880(ここは固定費という考えもあるが、現在当院はスタッフが当時の倍になっており、人件費も倍かかっており、患者数に比例して増えていると考える)

雑費のうちの変動費分 50

変動費合計 1280

ついで固定費

経費 (3593 + 原価350) – 変動費 1280 – 減価償却 1175 + 借入返済 360 = 1848

ここに、自分の生活費を1500万乗せ、計算してみる。

(1848 + 1500) ÷ ( 1 – 1280 ÷ 7100 ) = 4082万円となる。

診療日数を200日、一人単価を4000円とすると、

40820000 ÷ 200 ÷ 4000 = 51人 となる。

すなわち、1500万の年収を取る為には、1日50人の患者の確保が必要となる計算だ。

これは一般的に言われる耳鼻科の損益計算とだいたい同じになった。

ただ、実際は開業医は年収1500万では心もとなく、以前のブログでも触れたように、3000万を目指すべきである。その為には、

55820000 ÷ 200 ÷ 4000 = 69.7人

3000万になるには、1日70人の患者数の確保が必要な計算になる。

皆さんはこれを簡単と思われるだろうか。大変と思われるだろうか。

クリニックの経費について理解する③開業当初の経費削減方法

さて、ここからは、特に開業当初経費を削減するにはどうすべきかということに触れていきたい。

冒頭の当院の損益計算書をみていただくと、やはり最も大きく占める経費は人件費だ(減価償却は実際は出ていない経費なので除く)。ここを減らすことができれば大きく資金繰りがよくなる可能性がある。

具体的に私がオススメするのは、開業当初は「看護師を雇用しない」ということだ。

科目にもよるだろうが、開業当初患者が少ない時は、看護師がいなくても、医師自身が医療行為をすれば問題なく、実際耳鼻科でも1日100人来るクリニックでも看護師のいない所もある。

まずは看護師が必要という固定観念を外しても良いと思う。

逆に、事務スタッフの給料を減らしすぎることは、士気に関わる為、ここはある程度無理してでも確保していく必要があると思う。ただもちろん全員パートで雇うべきだ。

他は、細かい物品の購入を、しっかりと相見積もりを取り、安く買っていく。

当院で行なっていた経費削減はこの程度だったように思う。

あと当院の場合、当初より広告宣伝費をかけているが、認知度が上がるまでは、自分の報酬を下げてでもここに資金を投入しても良いと思う。その際、どこにかけるのかは非常に重要だ。現在はネットに多くかける、ということになるだろう。費用対効果の分析は大切だ。

また、損益分岐点を大きく超えてくる患者数になってくる場合、今度は必要な経費はかけていくべきだと思う。体感的には売上8000万、患者数75人(耳鼻科では)くらいからだろうか。

この辺りから看護師の雇用、事務スタッフへのボーナスなどはケチらず進めていくべきだ。

そして細かい経費の削減より、患者数を増やすことを考えていく方が利益UPには効果的だと思う。

クリニックの経費について理解する〜まとめ〜

まとめると、

特に開業当初は経費をできるだけ減らし、損益分岐点を下げる。

その為には人件費を下げることをまず考える。

そして十分軌道にのれば、今度は人件費にもある程度資金を投入し、さらに患者数を増やしていくことを中心に考えていく。

こういう流れになっていくのが理想だと思う。

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記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)

耳鼻咽喉科クリニックの理事長として日々の診療、理事長業務を行うかたわら、開業医・開業準備医師限定のオンラインサロン「ドクターズチャート」をよいこはこいよと2019年に設立。
現在オンラインサロンは会員数1100名超(2022年2月現在。)
Twitterフォロワー数13,700人、音声配信メディアVoicyパーソナリティ

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