さて今回は、クリニック開業によってQOLはどのように変化したかについて触れてみる。
結論からいうと、私自身はQOLは大幅に上がったと思っている。
具体的にはどういうことか。
クリニック開業で後悔しないために知っておきたい、QOLを決める2つのポイント
人のQOLを決める大きなポイントは以下の2点だと私は思っている。
○時間が自分の思い通りに使えるか。
○自分のやりたいことができているか。
この二つが満たされていれば、少々忙しくても人は耐えられるものである。
多くの医師と同じく、私自身勤務医の時は常に精神的、肉体的に疲弊していた。
この疲労感の原因は、やはり、
「自分の思い通りにならないことが多い」
ということに尽きるのではないかと思う。
いつ呼び出されるかわからない緊張感、結果がうまくいくとは限らない長時間手術。
行きたくなくても参加が義務付けられている研究会、忘年会。
自分の考えとは違うが従わなくてはいけない診療方針。
こういった「自分の意思でコントロールできないこと」が勤務医時代は多かった。
(もちろんここで鍛えられたことが今に生きており、勤務医時代の環境には感謝しかないので、そこはご理解願いたい)
クリニック開業後の今の私のQOL
さて開業して今はどうか。
まず入院患者がいないため、時間外に電話が掛かってくることがない。
携帯を違う部屋に置いて寝ることができるのが始めは慣れず落ち着かなかった。
また、時々ではあるが、午前と午後の診察の間に昼寝を取ることができる。
昼寝は午後からのパフォーマンスを上げるという研究を聞いたことがあるが、これは身を持って感じる。
また、研究会、飲み会などは、行きたくないものは行かなくて済む。
医師会の会合なども時折あるが、直属の上司部下ではなく自営業者の集まりなので、ある程度自由に参加を決められる。
もちろん診療時間も自分で決めることができる。
開業して最もよかったと思われることは、この、
「自分の人生の時間を自分でコントロールできる」ということのように思う。
しかし、すべての責任が自分にあることになり、自分だけでなく家族、従業員と責任が生じる範囲は広がる。
経営のストレスは、想像以上に大きいもので、経営のことは24時間頭の片隅にあり、完全に忘れることはない。
特に開業後数年は、このストレスが大きく、あまり人と会いたくなかったほどだ。
クリニック開業で後悔しないために(QOLは上がる?)のまとめ
すなわち、
「自分の思い通りにならない精神的、肉体的ストレス」が、
「肉体的には少し楽になるが、すべての責任が自分にのしかかる精神的ストレス」
に変わるイメージである。
自分にとってどちらのストレスが許容できるのか、それも医院を開業するポイントの内の一つだろう。
記事の執筆者 MM (医学博士、耳鼻咽喉科専門医、医療法人理事長)
耳鼻咽喉科クリニックの理事長として日々の診療、理事長業務を行うかたわら、開業医・開業準備医師限定のオンラインサロン「ドクターズチャート」をよいこはこいよと2019年に設立。
現在オンラインサロンは会員数1100名超(2022年2月現在。)
Twitterフォロワー数13,700人、音声配信メディアVoicyパーソナリティ。